認知症に遠い心の持ち方
その3
つい先だって先方から電話があり、電話に出るや否や大きな声が飛び込んできた。余りに早口なので意味がわからなかったが、訴えたいことは急に足が痛くなって病院に行ったということでその顛末を二十分ほどしゃべりまくった。
脳が正常な者は、まずこちらの状況を聞いて都合の良い状態であれば自分の話を始める。ところが自己中心の者は自分本位で一方的、こちらは口を挟めない。
人間だから興奮すればそのようなことはたまにあるかもしれないが、毎回となればやはりどこか尋常ではない脳の状態だと思われる。つまり相手のことが自分の脳内に存在していないということだ。頭の中は自分のことでいっぱい。
まるで幼児が母親に唐突に話しかけ聞いてもらいたい一心で一気に話すのと何ら変わらないのである。
他者への気遣いを忘れた言動しかできない者の脳の状態は下り坂といえよう。
作品名:認知症に遠い心の持ち方 作家名:笹峰霧子