認知症に遠い心の持ち方
その9
二月は娘と孫は半月もの間東京のホテルに滞在した。東京の大学で六年間も過ごした娘は交通の便を調べるにも楽だったらしい。
半分ぐらいの受験が終った頃には合否の通知もぼつぼつ入っていたので私は落ち着いていた。
娘は務めている会社の用事で途中自宅へ帰らないといけない日が数日あり、ホテルに残されて独りで受験に行く孫は大丈夫なのかととても心配した。
一番の目的の大学の発表は一番最後だった。
最後の受験が終った時、結果は知らない孫から「終わったよー」といかにもほっとしたような文面のラインが来た。
「お疲れさまー」と私は返信した。
作品名:認知症に遠い心の持ち方 作家名:笹峰霧子