認知症に遠い心の持ち方
その8
勉強しなかった子が大学を受験する、しかも自分の目的の大学に行きたいというので、困ったものだと娘も私も思っていた。
みな落ちたらどうするんだろうと話していたが事はお構いなしに進んで行った。新年早々に大学入学共通テストが始まるとは聞いていたが詳しくは知らなかった。
一月中旬に今試験を受けてると娘からメールが来た。成績がわかってから大丈夫そうな大学に願書を出すとのこと。
子は自分で受験校を決めるというので親は口をつぐんだが、高校へ書類をもらいに行くのも大学へ願書を出すのも娘がした。
二月に入ってぼつぼつ大学の試験が始まった。
すべての試験が終わる迄合否は言わないで欲しいと言われ、一つ合格したときは娘と私はこっそり喜び合った。ここも良いよねと二人で盛んに褒め合った。
願書を出した学校名をみると何処でも良いぐらい良い学校ばかりだった。
作品名:認知症に遠い心の持ち方 作家名:笹峰霧子