認知症に遠い心の持ち方
その6
孫よりも娘の気持ちをもっとおおらかにさせるよう、繰り返し繰り返し忠告した。目的に向って一生懸命になるのが普通との考えがなかなか払拭できない娘の態度は孫にとってとても息苦しいことだったと思う。
疲れ切った心身を鞭打つのは、受ける側としては自分を守ることに必死になるしかない。少しでも圧力を掛けられると反発したくなる。
母と子のバトルは激しかったに相違ない。
私の忠告は少しずつ娘の心をほぐして行った。
もう何も言わない、言っても反発するだけだからとメールの内容も次第に変わって来た。
これからの人生は長いということを忘れかけた人の思いはこらえていても並大抵のことではなかったろう。
孫は一年間思い通りの生活をし、親に大枚のお金を使わせながら自分を育てていたのだ。雛が卵を孵化させるように、自分自身を取り戻す為に必死で反抗して圧力を払いのけ立ち上がった。
作品名:認知症に遠い心の持ち方 作家名:笹峰霧子