認知症に遠い心の持ち方
その5
私の人生晩年は実母や夫に寄り添いあたふたして過ごすと共に、20年間は遠くの孫のことにも気持ちが集中していた。自分のことはそこそこで、ともだちとの付き合いも滅多になくてしかも話していても上の空、愚痴を聴かされると鬱陶しくいい加減な相槌を打つ、そういう生活だった。
娘からのメールは眼を皿のようにして読み、カウンセラーもどきの返信をした。
孫が赤ん坊から幼児となり、小学六年生までは当地まで出掛けて世話をしたので行ったり来たりの生活だった。高校になって念願の学校に入学したときは私の気持ちまで浮き浮きしていたが、足腰が弱くなり当地へ行くことはなかった。
娘が制服姿の写メールを、夏服、合服、冬服と送ってくれた。
高学年になるにつれ受験を控えた孫が勉強をしないと愚痴を書いて来ることが多くなった。多分親子間のバトルもあるだろうと、直にそれを目の当たりにすれば血圧が上がるのも怖かった。
チャットだけで十分、という気持ちで、娘には全精力で応援メッセージやアドバイスを書いた。
作品名:認知症に遠い心の持ち方 作家名:笹峰霧子