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平和な復讐

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「俺の話を見て犯行に及んだとすれば、あまりにも短すぎる」
 と思ったが、そもそも、この事件は、似たトリックや内容を使ったというだけで、誰もが考えそうな、内容ではないか?
 それを考えると、自分にとって、何ら関係がないだろう。
 しかし、その翌日にも同じような事件があり、こっちは、同じように、二日後に解放しているという点でソックリだが、トリックは微妙に違っている。
 しかし、そのトリックも、刑部が考えたトリックではないか?
 刑部は気持ち悪くなった。
 しかし、この記事を見たことで、
「ああ、あの時、椎名君が、俺を訪ねてきたのは、こういう思惑があったからではないか?
 と思えた。
 自分のトリックを使って、似たような騒音被害にあっている人たちが、同じようあ復讐方法を用いることで、お互いに交換とまではいかないような、相互協力と言った犯罪を行っている。それも、刑部のアイデアであった。
 刑部は、二つのかかわりのなさそうな事件で、自分のトリックがいくつも用いられていて、共通点が魅入られることから。
「これは、椎名君が主犯として、行った犯罪だ」
 と思った。
 だが、これを警察に通報する気はない。刑部だって、椎名君がやらなければ、自分がやっていたという内容で、小説を書いたのだ。
 いや、小説に書いたからこそ、自分が実行しないということの証のように思え。逆に椎名君たちが実行してくれたことで、却って、胸がすく思いがしたのだ。
 それを考えると、
「ああ、これで、俺のアマチュア小説家としてのプライドが生かされ、実際の鬱憤も晴らしてくれたことは、
「礼を言いたいのはこっちだ」
 と言わんばかりであった。
 それを思うと、この事件が、
「ひょっとすると、俺たちでけではなく、たくさんの、クソガキを嫌だと思っている連中に希望を与えたのではないか?」
 と思うと、これほど気持ちのいいことはなかった。
「実際に手を下さなくても、実行してくれる人がいる。そして、俺はずっと隠れ蓑に隠れて安全であり、しかも、小説家としての満足感が得られるのだ」
 ということを考えれば、
「小説家になりたい」
 あるいは、
「本を出したい」
 ということを考えていたが、その望みを打ち砕いた詐欺師連中よりも、実に平和な復讐なのではないかと思うのだ。
「俺はずっと、こういう小説をずっと書き続けていくぞ」
 と、心に決めた刑部だった……。

                 (  完  )
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作品名:平和な復讐 作家名:森本晃次