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ショートショート まとめ

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「次は……ハーネスとモジュラーを……パラレル……にコネクトし……ターミネータ……アダプタを……」。

愛子はいつの間にか涙を浮かべながらあちこちに散らかった部品を探している。

「どうして、こんなに訳の分からない言葉ばかり使うのよー」

と泣き声になっている。もう止めてしまいたいのだが、これから毎日家事から解放されるのを諦めたくなかったし、随分とお金を払った意地で続けているのだが、もう頭はパニック状態である。

「出来ましたか」「出来ましたか」
インワイは出来ましたかを連呼している。愛子はとうとう耐えきれず「うるさい!」と怒鳴りつけながらインワイの頭を手に持っていた電源接続用コードでバシッと叩いた。インワイの体が横に倒れたが、直ぐにふわーっと元に戻りゆらゆら揺れていた。

その無表情さとセクシーな唇にまたまた逆上した愛子は、さらにコードで叩き続ける。インワイは床に叩きつけられた反動で直ぐに起きあがる。それをまた愛子が叩く、まるでボクサーがパンチングボールで練習しているように、インワイの体は床とコードの間を目まぐるしく行き来した。

愛子は日頃の怠惰な生活がたたって、息があがり、その場にドテッと横になり、ゼイゼイいいながらインワイを睨みつけているうちに、いつの間にか眠ってしまった。



「あれ? どこまでやりましたっけ? あれ? あれ、あれ、あれーっ!」

流石にさんざん叩かれたので、インワイもどこかおかしくなったみたいだ。盛んに「あれーっ」と叫び続けている。

うたた寝から目を醒ました愛子はまた怒りがこみ上げて来た。今までにさんざん訳の分からない言葉でいじめられた仕返しとばかりに、まだ手に持っていたコードで「うるさいっ!」と叫びながら、バシッとインワイの胴体を叩いた。

「ひぃーっ」とインワイが悲鳴を上げる。その外見からこんなに人間的にできている人形とは思わなかったのに、叩く度に悲鳴をあげるものだから愛子もいつの間にかサディスティックな気持ちになり、さらに叩き続ける。
「バシッ」
「ヒーッ」
「ばしっ」「ひーっ」。

汗だくになりながら愛子は叩き続け、その顔には喜悦の色が見える。




愛子は何時になく身体が動くし、家事もやる気になってきた。そしてあたりに散らかったものをてきぱきと片づけて、

「さあ、後は洗濯をして、料理をして……」


(了)