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ショートショート まとめ

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家事をテキパキ



―最初にお読み下さい― 
そう書いてある紙を読みながら、愛子は早く中を見たくてうずうずしていた。TVショッピングでこの商品が放映されると直ぐに申し込んだものだ。何しろ愛子の一番嫌いな、日常の家庭雑務を全部引き受けてくれるという夢のようなロボットで、商品名は“一楽くん”といった。

 ―まず“一楽くん”を取り出す前に、一番上に入っている袋の中より、取り扱い方を説明してくれる『インストラクターワイフ』略称インワイを取り出します。―

愛子がそれを取り出す時にスイッチに触れたらしく、突然「こんにちは」とビニール人形がしゃべりだしたものだから、愛子はびっくりしてそれを放り投げてしまった。部屋の隅で「こんにちは」を言い続けている略称インワイを見ながら、

“こんなものを頼んだ覚えはない。しかし、これとは別に箱の中にはロボットが入っている筈だ”

そう思い直した。愛子はインワイの股間の辺に小さな液晶ディスプレィがあるのを見つけた。そこには【次へ】、【戻る】、【終了】という文字が明滅していた。愛子はその【次へ】という所を指で押した。

「それではまず一楽くんを箱から取り出しましょう」の声に促され愛子は箱の中程に収まっている“本体”を取り出しにかかった。段ボールの間に収まっている“本体”は発泡スチロールで固定されていて、少し動くが取り出せない。愛子はスチロールをカシャカシャベリベリとむしり取り辺りにばらまき、やっと本体にたどりつき持ち上げようとした。

「どうしてこんなに重いのよ」と、いいながら思いっきり持ち上げた。ずりずりと引き出されてきたロボットは小さな洗濯機に掃除機をくっつけたような形で、四角い胴の象さんという感じでとてもてきぱき家事をやってくれそうには見えなかった。「またハズレかな」愛子は、今までにTVショッピングで買ってはみたものの、結局押入を占領している物たちを思い浮かべた。

「まず、組立を始める前に必要なものが揃っているか確かめてみましょう」インワイが言っている。

「パラレル……、フロント……、デバイス……、ドライバ、モジュラー……」

 段ボールの底方から、色々取り出して周りに並べ終わった時、愛子の頭の中には宇宙人の言葉か、魔術師の呪文のような意味不明の言葉で一杯になっていた。

「さあ、全部揃いましたか」

インワイが言っているが、愛子は催眠術にかかったかの様にうつろな目でそれに反応している。