ショートショート まとめ
消臭列島
A社の開発した消臭剤は、画期的だった。
それは無味無臭そのもので、人体への影響も全く無い。
街中で、あるいは電車内でも誰かがシューッとスプレーを吹いている。
誰もがバッグやポケットにスプレー付ボトルを携帯していた。
またカプセル化したものを飲むことにより、口臭も出なくなった。
もとより清潔好きの国民性もあって、女子中学生から始まった消臭ブームは、またたく間に日本全国に広がり、公衆トイレは勿論、ドブ川さえいやな匂いがしないという。あげく排泄物まで匂わないという超無臭国家になってしまった。
また、この消臭ブームは色々な弊害をもたらした。
魔女狩りのように、ホームレスや老人がリンチにあった挙げ句、大量にスプレーを噴射された。
匂いの強い食べ物が少なくなり、グルメ人は、秘密の場所でクサヤのようなものを食べているというウワサもある。
そしてついに、恐るべき事態が起こってしまった。
以前から敵対しているX国が、ミサイルを大量発射した。
迎撃ミサイルで爆破された後には物凄い匂いの雨が降って来た。
直撃を受けた都市もたまらず、あたりは、人糞の匂いに満ち、人々は悶死、気絶、錯乱。都市機能は完全にマヒした。
もうすぐ、大量のX国人がマスク無しで、この列島に上陸してくるだろう。
end
作品名:ショートショート まとめ 作家名:伊達梁川