ショートショート まとめ
平和主義
Aは発射ボタンに手をかけているBの前に立ち、思いとどまるように説得した。
「いくら何でも肌が黒や茶色というだけで、殺してしまうなんて差別以前の問題ではないですか」
Bは、余計なことをするなというように、Aをにらみつけ、断定的に言った。
「それはそうだが、生理的嫌悪というものは、理屈では納得できないんだよ」
Aの瞳は、どうしても阻止しなくてはならないとの使命感に燃えている。そして熱っぽく説得を続けた。
「具体的には何も被害を受けた訳ではないのでしょう?」
Bはうんざりしたような顔をAに向けて言った。
「あなたは気にならないんですか。あいつらは身体能力も高いし、生殖能力も旺盛だ。放っておいたらどんどん増えてしまって、私たちがこそこそと暮らさなくてはならなくなると思わないかね」
それから、さあそこをどいてくれとAを横にどかした。
「それにしても生物兵器を使うなんて」
AはBの意志の固さに押され気味ながらも、あきらめ切れない様子で、抵抗した。
Bは青臭いやつめと思いつつ、Aに向かって言った。
「ロッカーの後ろにごきぶり退治のスプレーをかけるぐらいで、オーバーなんだよ」
end
作品名:ショートショート まとめ 作家名:伊達梁川