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ショートショート まとめ

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【あるもの】


「第三飼育場の様子はどうかね、そろそろ出荷できる頃だと思うが」
部長が部下に聞いている。

「精神の進歩が今一つです。もしかしたら、もう進歩が望めないのかもしれないですが、もう少し伸びないと出荷できる状態にはらないのです。もう少し様子をみようかと」
部下は、残念そうにそう言った。

「第四飼育場がダメになった今、第三飼育場が頼みの綱なんだから、よろしく頼むよ」
部長はそう言って、しばらく書類を見ていたが、何かを発見したらしく、部下に向き直り「数量がどんどん増えているようなのだが、このまま増えると品質の劣化につながらないかね」と心配そうに言った。

部下は、ああそのことかと思いながら
「心配ありません。【あるもの】を仕込んでおりますので」と得意そうに言った。

部長は【あるもの】というのに興味を抱いたらしく「何だねその【あるもの】とは」と聞いた。

「人間は、何かにすがっていないと不安になるらしいのです。そして、【あるもの】を数種類与えることによって品質の向上にも役に立つし、ある種と別の種が殺し合い、増えすぎにも防ぐ一石二鳥のものです。」

部長は講釈はいいから早くそれを教えなさいというように身を乗り出した。

部下はもったいぶりながら言った。

「それは宗教です」

end