ショートショート まとめ
生まれかわり
自分の不遇の何もかもが容姿のせいだと思い込んでいる男がいた。
「ああ、できるなら他の人生に生まれかわってみたいなあ」
とぼとぼと歩きながら、愚痴をもらすと
「もしもし、あなた」
と声がした。男が声のする方に顔を向けると、シャッター通りと呼ばれる元商店街の角、【転生屋】という看板の前で愛想のいいおばちゃんが手招きをしている。
「えっ、俺?」
と男は(いつこんな店出来たんだろう?)と思いながら、おばちゃんに近づいていった。
「あなた、別の人に生まれかわってみたいと思ったことがありません?」
おばちゃんの言葉にますます不思議に思え、男は尋ねた。
「なんで、俺の思った通りにこんな店があって、思ってたことを聞くんだい?」
おばちゃんは、「ああ、文字数制限があるのでね、これでいいのだ」と言った。
あまりにはっきり断定されたので、男はずばり
「もっと背が大きくすらっとして、頭もよくて、収入も結構あって……」と並べた。
まあ、いっぱい並べたもんだとおばちゃんは呆れながら、
「ああ、それらは100年から千年待ちになりますね」と言った。
「ええっ、じゃあ、どんなもんが空いているんですか」不服そうに男が言うと、
「まあ、これなんか妥当なところだと思いますよ」
とおばちゃんは、勾玉のようなものを見せてくれたが、男にはどこが妥当なのか分からない。
「じゃあ、それにしてください」男はすぐに決断してそう言った。
「おや、いっぱい希望を並べたわりには決断がはやいね」
「ああ、文字数制限があるようなので」男が投げやりに言う。
自分の不遇の何もかもが容姿のせいだと思い込んでいる男が、
「ああ、できるなら他の人生に生まれかわってみたいなあ」
とぼとぼと歩きながら、
『あれっ! このようなことが以前あったような気がするなあ』
作品名:ショートショート まとめ 作家名:伊達梁川