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タバコと毒と記憶喪失

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 ということが、まず出てきた話で、そのロケットが突然、戻ってくるというところから、ドラマは始まったのだ。
 ロケットが戻ってきて。途中から、宇宙飛行士とも、連絡がついて、
「今までどうしていたんだ?」
 ということであったが、宇宙飛行士には、行方不明の意識はなかった。
 むしろ、
「何かの故障があって、地球から、強制送還させられた」
 と思っていたようで、実際には、行方不明になってから、1カ月以上も経っていたので、
「もうダメだろうな」
 ということで、ほとんど、諦めの境地であった。
 国会では、
「この件を、本当に国民に話していいものだろうか?」
 というものだった。
 なぜなら、いきなり話をすれば、国民はパニックになり、宇宙開発どころではなく、日本において、
「開発の中止が叫ばれ、二度とロケットを作れなくなる」
 ということになるであろう。
 そんなことはさせまいと、与党の一部の議員は、叫んでいる。
「日本の未来がどうの」
 あるいは、
「宇宙開発の危険性がどうの」
 というのは、彼らには関係がなかった。
 要するに彼らには、
「いかに、金が儲かるか?」
 あるいは、
「いかに自分の得票数に繋がるか?」
 ということであった。
 それがなければ、宇宙開発など、
「自分には関係がない」
 ということであった。
 逆に反対している方も、宇宙開発がどうのではなく、
「相手の人気をいかに貶めて、次の選挙で票を稼ぐことができるか」
 というものであり、こちらも、
「自分のことしか考えていない」
 という、
「世間一般に普通の国会議員」
 でしかないのだ。
 そもそも、彼らに宇宙開発の「うの字」も分かるはずもない。
 それを思うと、
「日本のソーリがあれなんだから、下っ端だって、こんなものだろう」
 というのは、想像もつくというものだ。
 確かに、有能な若手もいるのだろうが、しょせん、出世していくうちに、
「長いものに巻かれていく」
 というのか、それとも、
「世渡りというものを知ってしまうのか」
 どちらにしても、日本の将来は、いつも、似たような政治家が出てきては消えていくという、そんな時代になっていくのだった。
 そんな時代において、まるで犠牲者ともいうべき宇宙飛行士は、何とか難を逃れて地球に帰ってきた。
「何をいまさら、帰ってこなくてもいいのに」
 と、話題をうまく消そうとしていた国会議員には、
「いい迷惑」
 にしか、映らなかったのだ。
 地球の科学力も、当時にはかなりのものがあったようで、火星近くくらいまで、レーダーで追えていたようだ。
 しかし、通信に関しては、月の軌道から、だいぶ地球に近づかないと、音声が途切れてしまう、
 そういう意味で宇宙開発において、ソ連やアメリカに勝るものはなかったようで、その分、日本は、開発に遅れている分、焦りもあった。
 そもそも、日本には、憲法で決められた、
「軍事力の放棄」
 というものがあり、時代としては、やっと、
「もはや戦後ではない:
 と言われ、
「万国博覧会」
「オリンピック」
 まで開くことのできるだけの、国家に戻ってきたのだった。
 これは、大日本帝国時代の、欧米列強の植民地にならないように、不平等条約の撤廃ということで行っていた、
「富国強兵」
「殖産興業」
 とはまったく違うものであったが、突き詰めれば、
「軍事力を使わないだけで、やっていることは同じだ」
 と言えるのではないだろうか?
 それを考えると、
「本当であれば、ここまで必死になって、宇宙開発を進める必要などないのではないだろうか?」
 と言えるのだろうが、今度は、政治家のプライドや他国に対しての意地のようなものから、国民の税金を使って、開発したロケットも、結果失敗に終わってしまうと、すぐに、次の計画に移るという、一種の、
「潔さ」
 であったり、日本における科学力を証明することで、海外へのアピールも大切だと思われるのであった。
 宇宙空間から戻ってきたロケットの乗組員は二人乗りで、最初、連絡が取れなくなるまでは2人だったものが、連絡が取れるようになると、一人になっていたという。
 地球の管制塔から、
「どうして一人になったんだ?」
 と聞かれた、残った宇宙飛行士は、
「分かりません、私も途中までは、意識があったのですが、気が付けば、今のような状態になっていたんです」
 というではないか。
「一か月、行方不明だったんだぞ」
 というと、
「そうなんですか?」
 ということであった。
 だが、一人の科学者は、それを聞いた時、この状態を、
「当たり前だ」
 と思ったようだ。
 子供向き番組としては、かなり難しいものであったが、その見た時は大学生だったので、その科学者が考えていることが、
「相対性理論というものを、考慮に入れている」
 ということが分かったことだ。
 当然に、子供に分かるはずがない。相対性理論というと、アインシュタインが考えたもので、
「光速で移動すると、普通の時間軸と違った進み方をする」
 というもので、考え方として、
「ロケットに3カ月搭乗していれば、普通の世界では、数百年が経過している」
 というような理屈であった。
 さすがに、この違いは大げさなのかも知れないが、ありえないことではないと考えられていたのだ。
 地球に生還するためのルートを正確に戻ってきていたロケットだったが、普通に考えれば、分からないことが多かった。
「果たして、ロケットは、この2カ月の間、どこにいたというのだろうか?」
 その一人の科学者は、その答えを、
「相対性理論」
 の中に求めた。
 つまり、
「光速と、普通の速度の違いが、生んだ時間の歪というものが、その辻褄を合わせようとして、2カ月の空白期間を、ロケットの中に作った」
 という考えであった。
 ただ、これは、実際の辻褄を合わせるものではなく、
「相対性理論の辻褄」
 を合わせようというものである。
 逆にいうと、
「この空白の時間が、時間の進みを示さないという証拠になるもので、宇宙空間に、人間が出ていけば、どうしても、避けては通れないものではないか?」
 ということであった。
「では、二人のうちのもう一人は、どうして死ぬことになったのか?」
 ということであるが、
「本来なら、一人の人間しか通ることのできない。宇宙空間においての歪を飛び越えることに、二人も載っていたということで、もう一人は時間旅行というものから弾き出されたのだ」
 ということではないかと思った。
 その証拠に、生き残った宇宙飛行士に、もう一人がどうなったのかを聞いた時、
「ミイラのように干からびている」
 という返事が返ってきたのだった。
 ミイラというのは、もう一人がいっているだけで、地球にいる人間には想像もつかない。一体どういう内容なのかと思っていたが、科学者には、想像がついていた。
 実際のロケットの運用として、途中からは、自動運転を行い、宇宙飛行士は、1週間の睡眠マシンに入り、自動睡眠に入る予定になっていた。
 実際に、二人とも睡眠マシンに入り、カプセルの中にいる間、理論的に、二人は、
「光速を意識しない」
作品名:タバコと毒と記憶喪失 作家名:森本晃次