悠々日和キャンピングカーの旅:⑨東北太平洋岸(茨城~岩手)
■2月22日(初日):自宅 ⇒ 箱根(神奈川県)
【この日の概要】 「キャンピングカーの旅」の出発に相応しい快晴の下、好きなスムースジャズの曲を聴きながら、見えてきたのは満開の桜並木。国道1号線(R1)を東に進んだが、期待した「由比漁港」の「桜エビのかき揚げ丼」は不漁で食べられず。出発時間が遅かったため、静岡県と神奈川県の県境を越えた直後の箱根で車中泊。自宅からはバイパスを乗り継いだが、わずか140kmの走行距離だった。
【この日のポイント】 出発前に取り付けた地デジアンテナが上手く機能し、由比漁港でテレビを見ることができたこと。かなり検討して取り付けたUFOアンテナの有効性に満足し、嬉しかった瞬間だった。
【本文】 「キャンピングカーの旅」の「準備リスト」には、「当日の準備項目」を設けており、旅を重ねる度に、追加項目が多くなっている。
それに加え、昨夜、自治会のあるミーティングを公会堂ではなく、「ジル」のダイネットで開催した結果、前日に積み込む分が出発日の今日にずれてしまい、全ての準備が終わったのは昼前だった。
自宅の駐車場は北から南へ、パラモーター(エンジンを装備したパラグライダーで、平地からテイクオフして上昇できる)の機材を積みっ放しにした軽バン、妻のCX5、そして入れ易さから、いつも頭から入って駐車している「ジル」が並んでいる。
そこから、バックモニターを見ながら「ジル」を動かすと駐車場が広く空いた。旅の間は多分、妻のCX5がそのスペースを使うのだろう。
静岡県西部の自宅から東方面に向かう際はいつも、遠州灘に面する小笠山(おがさやま)の北麓にあるエコパ(ラグビーのW杯が開催された「静岡県小笠山総合運動公園」)の横の県道を走る。その街路樹は桜の木で、2月下旬の今、既に満開に近い状況だった。多分、河津桜なのだろう。
ちょっと早い春爛漫な雰囲気を味わいながら、国道1号線(R1)に入り、私ひとりの「キャンピングカーの旅」が始まった。
妻との会話のない「ひとり旅」のため、何かを聞きたくなった。しかし、フロントガラスに貼り付けたアンテナがいまいちで、FMラジオの受信感度が悪い。そのため今回は、ウォークマンを持ち込んだ。
約200枚のCDを取り込んでおり、それを曲別にランダム再生したところ、私のお気に入りのスムースジャズの曲が流れ始め、“幸先の良いこと”だと勝手に験担ぎしながら運転を続けた。
掛川バイパス、日坂(にっさか)バイパス、藤枝バイパス、静清(せいしん)バイパス、富士由比バイパスとつながるR1には殆ど信号はなく、東名と並ぶ大動脈だ。
それでも所々でいつも、軽い渋滞が発生していることから今、掛川バイパスの西側部分や大井川の橋梁の拡幅工事、それの静清バイパスから富士由比バイパスの接続部分の高架工事などが進んでいる。
いつも思うのだが、渋滞の発生が続き、暫くしてから拡幅などの工事が着手されるのだが、そうではなく、先を見て、最初から渋滞が発生しない仕様でバイパスができないものか。限られた道路建設の予算もあると思うが、2回に分けるより1回で進める方が建設費の合計は安価になるものと思うのだが・・・、それに、ドライバーにとっては気持ちの良い運転ができるのに。
静岡から清水までの静清バイパスを抜けた先で、富士由比バイパスに入った。
そこからは、清水港内のコンテナ船が着岸する興津埠頭(おきつふとう)が右に見え、R1は駿河湾沿いを走る。その山側には並走するJR東海道線、薩田峠(さったとうげ)のトンネルを抜けた東名が海側を走り始めると、狭い海岸線を3本の日本の大動脈が並ぶ交通の要衝だ。
もし津波が襲来するならば、新東名や新幹線はあるものの、日本の経済は多分、止まってしまうだろう。
やがて由比漁港が見え、右折して港に入った。埠頭の横の道に面した窓口で注文したものを受け取り、その傍のテーブルで食べるような簡素な店があり、そこの安くて美味しい「桜えびのかき揚げ丼」は私のお気に入りなのだが、残念ながら、不漁のため臨時休業だった。
昼食をどうしようかと思いつつ、漁港の奥の埠頭まで走ると、かなり広いスペースがあり、「ジル」を停めた。その向こうには数人の男たちが、やけに長い漁網を扱っていたが、補修か何かをやっているのだろう。埠頭では数人が釣り糸を垂らしていた。ここで昼食を取ることにした。
ダイネットの窓を開けると、気持ちの良い早春の風が吹き込んできた。その中で、湯を沸かしてカップ麺を作った。期待した「桜えびのかき揚げ丼」が「カップ麺」になってしまったが、それを食べながら、テレビでも見ることにした。
実は、今回の旅の前に、「ジル」の後方に指向性のないUFOのような形状の地デジアンテナを取り付けていた。この場所でのチャンネル設定のためにチャンネルスキャンを行うと、静岡県内の標準的な6つのチャンネル設定ができ、しっかりと地デジ電波を受信して映っていることに満足感を覚え、この「キャンピングカーの旅」の二つ目の“幸先の良いこと”になった。
窓から見える釣り人たちに目をやると、誰も釣れていなかった。多分、潮が止まっているのだろう。
昼食後、R1に戻ると直ぐに富士川に差し掛かった。その橋の上から雪を頂く富士山がしっかりと見えた。
眺める景色の中に少しでも富士山が入ると、静岡県民のみならず、多くの日本人は嬉しくなるものだ。この景色を三つ目の“幸先の良いこと”としてカウントした。
富士山から110kmの距離にある自宅からも富士山が見える。特に、2階の寝室からは、窓枠が額になり、一幅の絵画のように見える。冬の夕焼けの富士山は赤く見えて、特に美しい。
今年の冬は降雪量が少なく、その上、強い風で積もった雪が吹き飛び、暫くの間は冠雪が見えなかったが、数日前の低気圧の通過で今日は、十分な冠雪になったようだ。
そういえば昨年、コロナ禍で登山が中止になったが、今年の山開きはどうなるのだろうか。そんなことを思いながら、道の駅「富士」で小休止。ここの2階の展望台からも富士山が見えた。
東に進むと沼津、そして三島を通過、箱根峠への上り坂に差し掛かった。標高846mの箱根峠まではかなりの勾配でカーブが続く「天下の剣」だ。
キャンピングカーは上り道をガンガン飛ばして走る車種ではなく、そうかといって、車重3トンの「ジル」だが、2800ccのディーゼルターボエンジンで厳しい状況にもならず、登坂車線を低回転で、のんびりだが確実に上っていった。
県境の峠を通過して神奈川県に入ると、かつては有料道路だった箱根新道(R1バイパス)には入らず、芦ノ湖に通じるR1を下り始めるとすぐに、道の駅「箱根峠」が見えた。午後4時を少し回った時刻だったが、道の駅の駐車場は殆ど混雑していなかったので、今夜の車中泊の場所に決めた。
ここの駐車場は急勾配のR1に面しており、芦ノ湖側から上ってくるクルマのエンジン音が多少気になる。そこで、バンクベッドの寝る側が、道路から少しでも離れるように、「ジル」の向きを考えて駐車した。
道の駅の駅舎の裏からは、芦ノ湖とその対岸の箱根山(駒ヶ岳)が見えた。なかなかの絶景だ。