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静岡のとみちゃん
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悠々日和キャンピングカーの旅:⑨東北太平洋岸(茨城~岩手)

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■2月27日(6日目):大洗 ⇒ 高戸前浜海岸(茨城県)


【この日の概要】 「大洗サンビーチ」の波打ち際から戻る時に見た「ビーチの地図」、そこには津波到達ラインが引かれていた。この旅で初めて、東日本大震災を意識した瞬間だった。「大洗マリンタワー」からの絶景、「大洗磯前神社」の海の岩礁の上の鳥居、「偕楽園」の満開の梅の花、「平磯海岸ジオサイト」で見た巨大な自動車運搬船、今日は印象的な情景が多く、「鵜の岬温泉」に浸かりながらゆっくりと噛みしめた。日没後、今夜の車中泊の場所を探して、たどり着いたのは、海に面した暗闇の駐車場だった。

【この日のポイント】 茨城港付近で、道を隔てて建機の競合メーカーの工場が建っていたことに驚いた。その理由は、日本から海外への建機を輸出する際の貨物船の共同運行で物流費を削減しているとのことで、更に驚いた。

【本文】 バンクベッドの横の小窓から見えた外は晴れていた。昨夜ほどではないが、風はまだ強く吹いている。でも、気持ちが良い。疲れは残っていない。食べて熟睡すれば、疲れを翌朝に持ち込まないものだ。
 「ジル」のエントランスの横の下駄箱に常備しているサンダルを履いて、サンビーチに向かった。
 南北に長いビーチの北端はすぐ横のマリーナの防波堤だが、南端は見えない。そして波打ち際までは遠い。この広大なビーチは北関東最大とのこと。遠浅の海の沖には白波が見え、太陽光はまぶしく、爽快な空間が広がっていた。
 波打ち際へと歩いている時、強い海風が作った風紋の上を砂が流れ、更に新しい風紋を作っていた。その砂を手に取ったところ、それはやけに細かく、粒というよりは粉末だった。風は息を付くもので、次の風が吹いてきた時、慌てて、デジカメを手で覆った。
 寄せる波に足を浸けた時、まだ冬の冷たさがあり、強い風がその冷たさを増長させる。ところが、膝上まで海水に浸かって貝を掘っている人たちがいた。もちろん冷たさを防ぐ腰までの長い防水のズボンを履いていた。獲っているのはアサリかハマグリか? 寒い時期のアサリは旨い。

 追い風に背を押されながら「ジル」に戻っている時、このビーチの地図が載った掲示板が立っていて、何気なく見たところ、津波の浸水跡がオレンジ色のラインで書き込まれていた。海岸から少し高台にある民家の手前の道路まで、津波は押し寄せたようだ。
 あたりを見渡したところ、ビーチと駐車場の間には多数のテトラポッドが並んでいた。それは、津波の襲来後に設置されたものなのだろう。

 この旅で初めて、「津波」の被災地跡を意識した瞬間だった。ドキッとした。
 「東日本大震災」を忘れていた訳ではなかったが、間もなく10年目の3月11日を迎える。その地に今、立っていることを強烈に感じた。足の親指に力が入った。
 気の向くままに、茨城県まで走ってきて、利根川沿いを下り、鹿島灘を北上してきた。そして、更に北上してゆく今、この旅のテーマが頭に浮かんだ。震災復興状況の「今」を見ること。そう決めた。

 実は、震災直後からほぼ毎日、テレビに映し出される津波のシーンやその被災地、さらに、ネット検索で繰り返し見た津波とその被災地の惨劇、それらが頭から離れなかった。
 最初の行動は、本屋を回って、震災の記録の写真集を幾つも購入したことだった。
 しかし、どうしても直に被災地を見たくなり、震災から2ヶ月経ったGWに、静岡県からバイクでひとり、テントを持参したキャンプツーリングで、被災地を見て回ったのは二つ目の行動だった。被災した場所を目の前にすると、ただ、ただ見続けた。聞こえた音は幾つかあったかと思うが、覚えているのは風の音だけだった。その現場を一生忘れることはできない。
 そして三つ目の行動は、その数ヶ月後、震災時に奮闘して放送を続けた石巻のコミュニティFMを取材したことだった。
 だからこそ、震災後の復興については、人一倍気になっていたのだが・・・、10年の歳月で、その意識が次第に低くなっていた様で、そんな自分自身が情けなかった。

 朝から何も食べないまま、ビーチに行ったため空腹だった。早速、朝食の準備に取り掛かった。レンジで温めた肉まんとスクランブルエッグを載せた食パン2枚、そしてコ−ヒーだ。ホットサンドメーカーがあれば、肉まんを挟んでつぶして焼いて、しょう油を少し垂らして・・・そのような朝食も良いのではと思い巡らした。実は、この穏やかな朝食タイムに、二つの小さな問題が起きていた。

 そのひとつは、レンチンの最中にインバーターから「キュー」と音がして電子レンジが止まってしまったことだ。2日前にもレンジが止まったが、その時は、そのような異常音はなかったが、電子レンジが止まったのは2回目だ。
 電子レンジはかなりのワット数を必要とするので、充電残量が少ないサブバッテリーでは、十分に対応できないのだろう。旅はまだ前半なので、当面は、節電とエンジンを掛けての暫定対応(応急処置)しかない。

 二つ目の小さな問題は、フライパンで目玉焼きを作っていた時のこと。油を十分にひいても焦げついてしまい、その結果がスクランブルエッグになってしまったのだ。このフライパンは、30年くらい前に買ったキャンプ用の大中小の鍋セットの蓋だが、もう限界なのだろう。この旅の後、取っ手の外れる仕様のフライパンを買うことに決めた。

 ついでに、「ジル」に積み込んでいる食器類や調理道具などについて紹介するならば、「キャンピングカーの旅」は非日常であり、気分が少し高揚することから、どちらかと言えば、家庭の台所用品よりアウトドアグッズを積み込んでいる。そう説明するとカッコいいのだが、実は、物置に、かなり前に使ったキャンプ用品が多々あり、その再利用だ。

 コロナ禍の今、キャンプが盛んになってきており、私の地元では、アウトドアグッズを売るコーナーやショップが増えている。そこに行って、ダイネットに似合いそうなグッズを探すのが今、ちょっとした私の趣味になっている。
 そのアウトドアショップには、幾つものテントが張られ、椅子やテーブル等が並べられ、キャンプの雰囲気を醸し出しているコーナーがあり、そこに入ったり、座ったり、疑似体験をしながら、グッズを選ぶのも楽しい。
 もしそこに、キャンピングカーが展示され、アウトドアグッズが並べられているならば、キャンピングカーに乗っている人にとっては参考になり、そうではない人にとってはキャンピングカーが欲しくなるに違いない。「アウトドアグッズのショップ」と「キャンピングカーのビルダー」のコラボを心待ちにしている。

 朝食後は、海浜公園の駐車場から出て、「大洗マリンタワー」に向かった。
 駐車場が見当たらず、タワーの正面入口の手前が広く開いていたため、そこに「ジル」を停めた。数分後、別のクルマもそこに停まったため、大丈夫なのだろう。「ジル」から下りてマリンタワーに向かった。9時の開館時刻まではあと3分、少し待って入館した。
 先ずは1Fで、スクリーンに映し出されていた「大洗の見どころ」のビデオを見た後に、展望階へのチケットを購入。3Fの展望階に昇った。