パンデミック禍での犯罪
しかし、この説が当たっていたことを証明したのは、純子の証言が飛び出したことだった。
純子は、最初、校長に話に行ったのは、探りに行ったのだ。
というのも、彼女は偶然にも、鮫島を見てしまった。
変装はしていても、純子という女の子が、元々彼女には、変装など効き目がないほどに人を見る目を持っていることと、さらに、彼女の中で、鮫島を父親のように慕っていたという意識があったからだ。
だが、その時、変装をしている鮫島に不信感を抱き、さらに、その後、鮫島だと思える人間の死体が出てきたことで、彼女の中で言い知れぬ不安が生まれ、校長に相談に行ったが、校長と話しているうちに、校長も信用できないと思い、それ以上聞けなかったのだ。
彼女は、少しの間それを黙っていたが、結局警察に自分の不安を聴いてもらった。そのおかげで、刑事の中で一か所、どうしても見つからなかったパズルのピースがもたらされた気がした。
「これで話が繋がった」
ということで、今、校長と、校長の証言で出てきた鮫島が重要参考人として、取り調べを受けている。
校長はあっさりと認めたらしいが、鮫島は、それを否定している。そもそも学校に恨みがあったのだ。
「計画が露呈した場合は、全責任を校長に押し付けて、自分は逃げればいいと思っていたのだろう」
それを考えると、校長は、観念するしかなかった。
それは、片桐が観念して自首してきたのと同じで、鮫島という男の本性が分かると、校長も、もう抗うことはない。
元々、優しくて、勧善懲悪なところがあったのだ。
そんな校長がこんな企みに引っかかるというのは、
「それだけ、鮫島という男のマインドコントロールがすごかったのかも知れない」
ということであろう。
結局は、
「パンデミックが原因で、それに国家が対応できずに起こった犯罪」
だということで、
「今のご時世。またいつどこで、同じような事件が起こっているのか、分かったものではない」
と言えるのではないだろうか?
( 完 )
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作品名:パンデミック禍での犯罪 作家名:森本晃次