色々な掌編集
二人で笑っている間に短いエスカレーターは、手をつなぐ間もなく終わってしまっていて、私は行き場を失った手をエミの頭に乗せた。
「また、小さくなったんじゃないの」
「そーお? これより小さくなったらどうしよう」
「ははは、持ち帰りやすくなるなぁ。トートバッグに入るでしょ」
「まさか、でも、だめよ。家にはうるさいものがいるから、門限にうるさいの」
「え~っ うるさいものって誰だろう? お父さん?」
「父も母も、もう亡くなったわ」
「そう、じゃあ、えっ! ダンナがいるの? 聞いてなかったなあ」
「ふふふ、外れ~ ダンナとはだいぶ前に別れたのよ」
「なんだよ、何の遠慮も無いじゃないか」
「あのね」
「何?」
「高校生の孫がね、私の門限にうるさいのよ」