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色々な掌編集

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謹啓



長引く不況で長年勤めた会社をリストラされた猪熊は、独り者の気安さで貯金も殆んどしていなかった。僅かの退職金もだんだん目減りして、アパートの家賃さえおぼつかなくなってきた。再就職も40代後半になると困難を極める。安い焼酎をチビチビやりながら、TVを見ていたら、政治家がパーティを開いて資金集めをしているらしい。「バカヤロー、オメエラのおかげでこんな生活だあ」とTVの画面に向って呟いても、自分がよけいみじめになってくる。

「アー、金、金、その辺に落ちてるわけじゃ無いし、パーティたって俺の所へ大金もって来るわけないだろうし」と独りごとを言いながら、柿ピーのピーナツをガリリと噛んだ。
ん? 誰も来ないで金だけ払わせればいいんだ。どうしても払いたくなると思わせる。これは無理だなあ、払いたく無くても払ってしまう。狙うはこれだなあ。

猪熊は生れて初めてといっていいくらい頭を使った。頭をかきむしりながら猪熊なりに良くできたなあと思う計画が出来上りつつあった。

「誰も警察に届けないだろうと思う微妙な金額を設定してと、あとは方法としては詐欺か脅しだなあ。」脅しは、すぐに頭に浮んだ。以前競艇場で知り合ったヤツがいる。かなり目つきの悪い男で、二蛭と名乗った。

その二蛭がボソッとしゃべるとなんとなく怖い。それでも猪熊と同郷の田舎の話をすると表情がくずれて、憎めない顔になる。猪熊にとって好都合なのが二蛭の手の指である。若い頃に町工場で働いている時、機械の操作ミスで小指と薬指を切り落してしまったらしい。まあ、そのお陰で障害年金だかなんだかが入るからいいやと笑っていた。猪熊は勝手に二蛭を集金係に決めた。

暇にまかせて、あちこちの挨拶状を参考にしながら、ついに脅迫、じゃ無かった案内状を作成した。
作品名:色々な掌編集 作家名:伊達梁川