色々な掌編集
ひまわり
単線のローカル線に乗って私は故郷に向かっている。何十年ぶりだろうか。私の座っている右側の車窓からは猛々しく茂った雑木林、そして左側からは川の流れが見える。上流から中流といった感じの水量もそれ程多くないその川には、所々に岩のせいで小さな滝とも言えない段差で白く泡だって見える所が見えた。
列車は何度かカーブをして、やがて所々に民家が見えてきた。昼過ぎなので昼寝でもしているのだろう、人影は見えない。近づいてくる民家の庭にある数本の向日葵が私の目をひいた。二階から手を伸ばせば触れることができると思えるほど丈が伸び、そして太い茎は木のように丈夫そうだった。大きな花が自身の重さによってややうつむき加減に咲いていた。向日葵、私は比べようもない小さな向日葵を病院のベッドで受け取ったことを思い出した。