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色々な掌編集

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おおおっ、パンツが入っている。サイフからパンツを取り出すなんて、初めてだよ。どれどれ、と履いてみるまでもない。いくら何でも小さ過ぎる。もっと大きなサイフを拾わないとなあ。地面を見ながら歩いて行く先に大きなサイフが落ちていた。さあ、パンツ、パンツ、ぴったりのパンツ。オレはサイフを開けた。大きなチケットが入っていた。これじゃコンサートの係員に文句を言われるだろうなあ。

そうだ、これをパンツの代わりにすればいい。オレはA4サイズのチケットを下半身にあててみた。隠れる。隠れるがずうっと押さえていなければならない。風が吹いてきた。ぴらっ、隠れる、ひらり、現れる。ええい、役立たず! オレはそのチケットで紙飛行機を作った。それっ! 紙飛行機はすーっと飛んで、パンツになった。オレは慌てておいかけた。待て~! かつて「待て~」と追いかけられて、待ったヤツはいないだろう。

パンツを追いかけて、結局見失ってしまった。気がつくと公演のある公園に着いていた。公衆トイレが見える。そうだトイレならパンツがよりどり見取りだ……と頭に浮かんだ。浮かんだが勝ちだ。オレは嬉しくなって、スキップしながらトイレにかけ込んだ。パンツはあった。便器に沿って運動会の万国旗のように、いや万国旗そのものがパンツになって天井から下がっていた。

パンツを一枚取った。星条旗模様のそれはぶかぶかだった。これじゃすぐ脱げてしまう。次々と試着するが、どれも合わない。見上げる万国旗には一枚しか残っていない。

最後の一枚、日の丸模様のそれは、びしょびしょに濡れていた。これを履かないとコンサート会場に入れない。オレはええいっと、濡れたパンツを履いた。


目覚めたのは布団の中であった。



作品名:色々な掌編集 作家名:伊達梁川