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色々な掌編集

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(夢)パンツが欲しい



コンサートに行くんだということが頭にあった。曖昧な天気と曖昧な温度。ほとんど風も無いのに下半身に風が当たる感じがする。な、なんと下半身むき出しじゃないか。れれ、どうしよう。どこかに隠れたほうがいいのだろうか。でも、誰も気付いてないように普通に歩いている。

行き交う誰も下半身むき出しで歩いていない。当たり前だよなあ。上半身はワイシャツにネクタイ。なんて間抜けな格好だ。これなら全裸の方が格好がつくよなあ。特にネクタイがこの状況にそぐわない。ネクタイはとってしまおう。このネクタイで……無理だよなあ。役立たずのネクタイを捨てた。それだけでまた身軽になった気がする。

ん? 下半身むき出しに黒い革靴? 間抜けだ。ええい! オレはサッカー選手のように思い切り足を振った。靴が飛んで行く、カアー! 靴が鳴いた。靴下を咥えたカラスだ。もう片方も振った。びゅん! 飛んで行く。やはりカアーと鳴いた。二羽のカラスが飛んで行く。そうか家に帰るのか。いいなあ、家に帰りたい。でもオレはコンサートに行くんだ。歩く歩く。通り過ぎる人がチラッと見て行くなあ。ああ、恥ずかしく思わない自分が不思議だ。でも、パンツを履きたい。できるならズボンも履きたい。

軽い軽い、身体が軽い。足は喜んで動いているようだ。でもこの状態を何とかしなくちゃ。ああ、どうすりゃいいんだ。この格好でコンサート会場に入れるのだろうか。ネクタイを捨ててしまったのがまずかったかなあ。いや、問題は下半身だ。答えも下半身だ。そうだチケットがある筈だ。たしかポケットのサイフの中……無い。ズボンと一緒に消えてしまったのか。無かったら、拾うしかないな。ほら、思っただけで、眼の前に落ちているじゃないか、サイフが。こんなに人が行き交うのに、誰も気付いていない。

作品名:色々な掌編集 作家名:伊達梁川