色々な掌編集
あの日のあと、一時は仲直りしたものの、結局ユキは会社を辞めて私のもとを去って行った。
私は、まだ本を読んでいるユキの姿を見てから、思いを断ち切るように次の駅で降りた。そもそも家とは反対方向だった。胸の中に何かが澱んでいて、多分泣いてしまえば、それは溶けてしまうような気がした。
普段降りたことの無いその駅の改札口を出て、私は寂れた商店街を歩き出した。ユキはなかなか頭の中から出ては行かず、商店街の外れまで歩いてしまった。また駅に向かうために引き返した途中で、パチンコ店が目に入ったが、もう他人になってしまったユキに申し訳ないような気がしてその前を通り過ぎた。
それぞれに違う思いを抱きながら駅に向かう人達に混じって、私は改札口に向かって歩いた。