色々な掌編集
ビイは、そこまで言って少しため息のようにふーっと息を吐いた。エイは自分のゲンキを少しビイにあげた。仕事で疲れて本当はあまり残っていなかったのだが、帰りの電車の中でうっかり寝てしまった若い男のゲンキを盗みとったのだった。
ビイは起きあがり「ありがとう」と言ってから話の続きを始めた。
「いたのよ、ノーガードでマンガを見ている若い女が。誰かの付き添いらしいんだけど、やっとカモを見つけたと思って近づいて盗んだの。やったあ!と思ったわ。いっぱいゲンキが入ってきて浮かれた気分で家に帰って少ししたら、吐き気はする、頭は痛いで大変だったあ。毒があったのに気付かなかったの、失敗だわ」
エイはビイを軽く抱きしめて言った。
「バカだなあ、ゲンキは俺があげるよ。そしてお前の笑顔が俺のゲンキになる。何も無理して他から盗ってこなくてもいいのに」
ビイはエイを笑顔で見上げる。エイの優しい顔を見て、ああゲンキは盗ってくるんじゃなくて、人にあげる方が気持ちがいいかもしれないと思った。