色々な掌編集
ゲンキ・サバイバル
ゲンキ、この世界はゲンキが重要な意味を持っていた。そして争奪戦も日常茶飯事だった。
エイは仕事を終えて自宅に帰った。玄関でチャイムを鳴らして、妻のビイが鍵をあけて「お帰りなさい」の笑顔を見せるのを待った。
いつも、かすかな「はーい」という声と、少しバタバタした足音がするのだが、しばらくたってもそれが無い。エイはあれっどこかにでかけたのかなと思いながら、鍵を取りだして開けた。
台所にも居間にもビイはいない。寝室を覗いてみると、ビイが寝ていた。エイが近づき寝顔を見ると、少し苦しそうな表情をしている。気配に気付いたかビイが薄目を開けた。
「お帰りなさい」とビイは弱々しい声で言う。
「どうした、具合が悪いのか」エイが聞く。
「失敗しちゃった」ビイがすまなそうな目をして言った。そして話を続けた。
「あなたが疲れてゲンキが無くなってきたようので、私のゲンキをあげようと思ったんだけどね。いっぱいあげようと思って、じゃあ補充しようと外に出たのよ。でもみんな私よりゲンキでガードも堅そうだったので、病院に行ったの。待合室で、見渡して弱そうな相手を探したんだけど、余分なゲンキを持っている人はなかなかいない。いてもガードがかたそうだったりでね」