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色々な掌編集

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俗に言う フリチンである。変態ではない正常人にとって、これは恥ずかしい。私は慌ててジャケットを拾おうとした。

が、しかし、手にはまだ水浸しのズボンを持っていた。咄嗟に片手を離して拾おうとしたので、そのびしょびしょのズボンがジャケットの上に落ちた。

悲劇が悲劇を呼び、まだ容赦なく降りかかった。どどどどと急いで入ってくる足音がしたと思う間もなくそいつは、下半身を露わにした私の姿に驚いて、足元がおろそかになった。私の大事なズボンを踏んだかと思うと、そのまま滑り尻餅を着いてしまった。

ほぼまんべんなく濡れてしまったジャケット、二度も水洗いしたズボンを私はうつろな視線で見ていた。もういいでしょ神様、もう神様のバカヤロウなんて言いません。私はじわっと涙が溢れてくるのを感じた。

私のジャケットを水浸しにした男も、私に文句をつけたい様子だったが、さすがにこの姿を見たら言いにくかったのだろう。何かぶつぶつ言いながら出て言った。その後ろ姿を見ると、少しお尻の部分にシミが見えた。

それを見て、ああ、泥の付いたまま電車の座席には座らずに、家まで帰っていたら、こんな目に遭わなかったのにと後悔しながら濡れたパンツを履き、ズボンを三度目の水洗いをした。

無事なのはTシャツのみだった。いくら何でもこのTシャツが水浸しになることは無いだろう。と思いながらも、これまでの展開から安心もできない。私は気を引き締める。

どこかで新しい下着とズボンを買いに行けばいいのだが、この格好で行くわけにはいかないだろう。あ、そういえばサイフ! ズボンに入れてあったサイフを上着のポケットに入れたのを思い出した。私は慌ててジャケットのポケットに手を突っ込む。

ふ~っ さすがに悪戯の神様もサイフを残しておいてくれた。少ないながらもお金も入っている。こ数時間の悲劇からすると、このことが物凄い幸運のような気もした。ハンカチも入っていた。しかし、この小さな布で何ができるだろうと、また絶望的な思いにとらわれる。

あ~~~っ 携帯があるじゃないか。これで誰かに連絡して来てもらおう。私は地獄で仏に会った気持ちだった。ボタンを押す。出ない。別の者、出ない。電源が入っていないか、電波の届かない所にいる可能性がありますってか。思えばこんな時にすぐ来てくれる友達もいない。

それにしても、下半身が寒い。ん、冷えて下っ腹が……。


終わり



さて、どうやって家まで帰るか……

一番いいのは 
トイレから110番
……かな

作品名:色々な掌編集 作家名:伊達梁川