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色々な掌編集

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違う違うあれじゃない



傘をさして、アジサイを見て回った。色々なアジサイがありました。時折カップルに出会うと、少しはうらやましいと思うが、そんなこと興味がなさそうに見て回った。道が狭かったり、広くなったり、坂があったりしている。

一通り見てまわり、帰り道でした。あっと思う間もなく、ぬかるんでいる足元が滑り、私は見事に尻餅をついてしまいました。幸い、誰にも見られませんでした。尻餅をつくなんて忘れるくらい昔だろうなあと思いながら、お尻の方を見たが、よく見えない。手でさわると泥がついてきた。ハンカチで泥を拭いて駅に向かった。お尻のへんにちょっと不快感がある。

そうだ、駅のトイレでよく見てみようと思った。個室でズボンを脱ぎ、まだかなり汚れがあることを知った。これでは座席に座れない。下はパンツのまま洗面所に行き、ズボンのお尻の部分を洗い流した。ふと顔を上げて鏡をみると誰かが憐れみの表情で私を見て出ていった。

私は水で洗った部分をしぼった。力を入れたとたんにぷすっとオナラがでた。臭いっ、自分で出したものながら、臭い。人が入ってきた気配がする。鏡で確認すると、若いやつがもろに顔をしかめて私を見て遠回りに通って行った。用をたし出て行く者も、やはり遠回りに足早に出て行く。完全に粗相をした男に見られている。それも大小。

違う、違う、違うんだあ。これは泥を洗ったんです。本当です。私は泣きたい気持ちでズボンをはいた。お尻に冷たい感触がある。さて、乾くまでどうしようかと考えた。


私はズボンのお尻全体に広がった濡れたシミを見ながらため息をついた。

トイレットペーパーを当てて少しでも水分をとろうか。そんなことをしても焼け石に水だろうなあと考えて、【ああ、焼け石が欲しい】と呟いた。

何人かが入ってきて怪訝そうな顔で私を見て過ぎた。ある者はニヤニヤしながら見て通り過ぎた。

いつまでもトイレ手洗い場にいるわけにはいかない。でも、これははっきりと目立つ。まだ自分には羞恥心がある。と、偉くもないのに胸を張ってみたのが、空しい。

ああ そうだと私はヤケクソの発想を得た。部分だから目立つんだ。全部濡らしてしまえば目立たないだろう。

もうそれしか考えられなかった。私はズボンを丸ごと手洗い場で洗い出した。頭に昔話が浮かんだ。

「おばあさんは川で洗濯をしておりました。おじいさんはトイレでズボンを洗濯しておりました」

つい口に出して言ってしまったのに気づいた時すでに遅し、入って来ようとした人が一瞬立ち止まり、慌てて出て行った。

作品名:色々な掌編集 作家名:伊達梁川