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色々な掌編集

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情熱的な接吻



掃除機でよく使っている先に毛のついた丸い吸込み口の毛が、俺の真似をして禿げてきたので取り替えることにした。ホームセンターで各社共用のものを買ってきて、つけようとしたが、それは微妙に大きさが合わず入らない。もうパッケージも捨ててしまったし、取り替えてくれないだろうから、紙ヤスリで細くしてはめ込むことにした。何度もはめてみて、削り直しどうにかおさまった。少し不安定な気もするが、使えるようになったので、とりあえず、デスクの上の細かい物を片づけて掃除を始めた。

パソコンのキーボードに自分の抜け毛が挟まっている。さらにキーボードを持ち上げてみると、下にも抜け毛が落ちている。俺は一句浮んだ。「毛が抜けて 間が抜けて 気が抜けて」 なんだこりゃ、俺は慌ててそれに赤い×印をつけた。そんなことをしながらすーっと吸込み口を横に滑らせていたら、突然はめ込んでいた毛の付いた吸込み口が外れ、俺は手を滑らせてしまった。自由になったホースが反動で跳ね上がった。と思う間もなく俺の下唇がブチューーッと音を立てて吸い込まれた。

先に何もついていないプラスチックの筒にチューされているのである。俺は「まてまて、俺はそんな趣味はない」と言いながらホースを引っ張った。びゅるるびょーと下唇が震えて音を出している。しかし唇が引っ張られるだけで離れてはくれない。俺はこんな情熱的なチューはしたことがないなあと馬鹿なことをふと思う。

そして下唇がビローンと大きくするのがおしゃれの、アフリカのある原住民の姿が頭に浮かんだ。そんな所に電話がかかってきた。その状態で電話に出るのは無理なのに反射的に受話器に手を伸ばした。イテーッ、思いっきり下唇が引っ張られて受話器を落してしまった。もう電話どころでは無い。相手の方はどこかの工場にかかったと思っているだろうなあ。

あせる俺はそれでもスイッチを切ることを思いつき、手探りでリモートスイッチのあたりをでたらめに押した。ビュイーンとさらに吸い込みが強くなった。さらに慌ててスイッチを押すが、最初の強さに戻るだけで全然止まってくれない。だんだん涙目になってきた目でリモートスイッチを見える方に向けて確認した。しっかり「切」の所を押して見るが全然反応が無い。俺は泣きながら懇願した。「お願い、やめてーっ」。なぜか女言葉になってしまう。

朦朧とした頭でなんとか最後の手段でコンセントからコードを引き抜きことを考えた。下唇を吸わせたまま、ヨタヨタと差込み口までたどりつきコードを引き抜いた。シュワーーッと音が小さくなり、やっと俺と掃除機の激しく長い接吻が終りをつげた。



作品名:色々な掌編集 作家名:伊達梁川