色々な掌編集
いつか王子様が
昔々のこと、山々と畑そして岩山の国、その岩山に建っている城に若くて美しいお姫様がおりました。夢見る年頃になっていて、いつか王子様が迎えに来ると信じて暮らしておりました。
ある嵐の日、見知らぬ若者が城の門をたたきました。山奥の城のこと、すぐに姫の知ることとなりました。姫はひと目見て、この若者こそ自分が待っていた王子様に違いないと思い、話を聞いてみると、まさに王子様でした。
若者は、国の内紛で城から逃げてきたが、お付きの者が次第に欠けてしまって、独りでここにたどりついたと涙ながらに話しました。そして、王様も姫がこの若者を気に入っているので、しばらく滞在するように計らいました。
若者は、勉学と武道に励み、姫はうっとりとその様子をみておりました。何年か経った頃、若者は元の領地の情報を知り、今こそ自分が行って元のように国を安定させるのだと決心しました。
若者は必ず姫を迎えにくることを誓いました。姫は涙ながら、必ず迎えに来ることを何度も確認して見送りました。
1年経ちました。王子様は迎えに来ませんでした。
2年経ちました。王子様は迎えに来ません。まだ内紛は収まっていないのだろうかと、姫は一生懸命祈りました。
5年経ちました。王子様は迎えに来ません。姫のお付きの者は、姫に勉学やダンスの教育をしようとしましたが、姫は「あの人がいつ迎えに来てもいいように」と自分の美貌を保つ努力だけに専念しておりました。