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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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続・おしゃべりさんのひとり言/やっぱりひとり言が止めらない

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その156 氣を使うセミナー



『氣』・・・『気』じゃなくて。

そうです。『氣を使うセミナー』です。
心遣いとか、おもてなしとか、気遣いの事じゃなくて。

僕には、鍼灸医、整骨整体師、接骨医の知り合いが三人います。
彼らに会うといつも、マッサージ程度なら軽くやってくれますし、特に接骨医には、僕がジョギングで足をくじいて骨折した時にお世話になって、3ヶ月ほども無料で治療してくれました。
さらに、義弟(妻の弟)が彼らの影響を受けて、会社を辞めてマッサージ師に転職したのが20年ほど前です。
義弟は『You tube』にも動画投稿していて、そのマッサージ店は結構繁盛しています。
その彼が転職しようと思うほどのキッカケとなった、あのセミナーに誘ったのが他ならぬ僕なんです。

最初に紹介した三人は、それぞれ別の地で治療院を経営されていますが、お互いに知り合い同士です。
その内の接骨医が『氣功』を研究されていて、その道では結構有名な方で、年中、セミナーを開催されていましたが、そこに参加した治療師同士での交流があったようで、鍼灸医が僕に「そのセミナーに参加したら面白い」と勧めてくれていました。
そして、当時テレビで流行していたクネクネ歩きで有名な「デューク更家さんの『ウォーキング講座』と一緒に、近くで開催される」と聞いて妻を誘ったところ、義弟も話を聞き付けて、興味本位でそのセミナーに参加することになりました。
『氣のセミナー』の参加費はたった1,000円でしたので、これで儲けようって話じゃなく、とあるイベントに講師として招かれていたようです。
でも僕は正直なところ、氣の力で人を操るなんて、インチキの眉唾物だと思っていました。
聞いていた話では、「誰でも氣功を体験できる」とのことでしたので、やらせとか集団ヒステリーみたいなものとかいう、正直なところ疑いの目で見ていましたが、そんなものとは全く違いました。あれは常識の範囲内だったと思います。
確かに面白くて、いい体験でしたので、その時のことを思い出しながらお話ししましょう。

講師は接骨医の野田先生(仮名)、会場はなんとかホールで、劇場のような舞台がありました。
野田先生がその舞台で「エイッ!」と超能力のように、人を投げ飛ばすのかと思っていたら、そんなことあるはずないですよねww
自己紹介から始まり、普段の治療院の様子や患者さんとの会話の内容などを紹介されました。
そして、その会話で「“どうでもいいこと”を一所懸命に訴えてくる患者さんが多い」という話をされたのです。例えば、
「薬指を骨折した人が、中指と一緒にテーピングで巻くと、頭が洗えない事ばかり気にされる。その手でもペンを持って問診票に記入出来てらっしゃるのに」
「腰痛の患者に、動いた方が治癒しやすいからと言っても、コルセットを巻いて固定されたがる。でも寝る時は外されて寝返りも打たれるというのに」
「腕を骨折して治療に来られている方にギプスをすると、家でもソファに座ったまま動かなくなってしまう。足のケガじゃないのに」
期待でワクワクのセミナーで最初にこんな話を聞かされたって、こっちも “どうでもいい”ですけど。そうなんです。どうでもいい話ばかりだったんですが、なぜこんな話をされたのかと言うと、不必要な事ばかり意識して、肝心な事に考えが及んでいないことから、「考え方を変えれば、結果は簡単に変わる」って事を体験しようというのが、このセミナーのテーマだったからのようです。

今の僕にとっては、そんなこと当たり前のことですが、当時は、(考えただけで物事が変化するようなことはあり得ない)と思っていたかも知れません。
それを氣功が証明してくれるという説明をされて、前の方に座る大柄な男性と、小柄な女性が、舞台に呼ばれて上げられました。
(断っておきますが、この二人は仕込みの客ではありません。僕と同じ、正真正銘の自費での参加者です)
まず野田先生は男性に、
「女性の後ろから腹部に腕を回して抱え上げてください」
と指示されました。まあ、女性はひょいと、簡単に持ち上げられました。恥ずかしそうにするその女性の表情に、会場には笑いが漏れます。
次は女性に、
「その男性を同じように持ち上げてみてください」
と言われました。しかし、女性は「ん、ん~ん」と頑張って持ち上げようとされましたが、無理ですよね。なかなか持ち上がりません。
今度は、野田先生が女性に、
「今までの人生で、一番嫌だった思い出は何ですか?」
と質問をされました。女性が、ずんっと困った表情で固まると、
「言わなくていいです。そのことを思い出したままじっとしてください」
と早口で言われて、すぐさま男性に、
「さっきのように、この女性を持ち上げてみて」
男性は、またすぐに後ろからその女性を抱えて、持ち上げようとされましたが、今度は、ぐ、ぐ、ぐ、ぐ~、と、ゆっくりしか持ち上げることが出来ないようでした。
会場からどよめきの声が起こりました。
「どうですか? さっきと比べて」
「重くなりました」
と、男性が答えると、会場がドッと沸きます。
「じゃ次は、あなたが一番楽しいことを思い浮かべてください」
そのように野田先生がその男性に言うと、彼は宙を見るようなしぐさで、半ニヤケの表情になりました。
「今、持ち上げてみてください」
と女性の方に指示されると、彼女がその男性の腰に手を回してグッと力を入れたら、先ほどはびくともしなかったのに、少し足が浮いて、その状態で2~3秒静止できたのです。
また会場からどよめきが沸き起こりました。
僕はタイミングとか、瞬間の集中力とか、そういう論理的な理由で説明できると考えましたが、その女性が、
「さっきより軽くなりました」
と言ったのには驚きました。舞台にいる二人の驚きと歓喜が入り混じった表情を見て、別の可能性を感じずにはいられません。
すると野田先生は、
「なぜこうなったかというと、人間は楽しいことを考えると氣が上向きになって、身が軽くなるんです。逆に辛いと氣が重くなって、動きも鈍くなります。それが周囲にも影響を与えるということが、解ってもらえたと思います」
「おお~!」
会場全体が納得させられてしまいました。