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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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続・おしゃべりさんのひとり言/やっぱりひとり言が止めらない

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「やってみたい人、手を上げてください」
さらに体験者を募集されました。僕はどうしようか躊躇しましたが、もし舞台に出て、その実感が得られなかったりしたら、場がシラケるんじゃないかと思い、手を上げられませんでした。
でも多くの希望者の中から、三組の男女が選ばれて舞台に上がり、先ほどと同じ魔法が同時に行われました。
「きゃー」という歓声と同時に、三組とも大成功です。
野田先生は、またこのように仰いました。
「“考え方次第で行動が変わる”という意味は、単に動きに変化が出るだけじゃなく、“うまく行く確率も上がる”という事を解ってもらえたと思います」
僕も納得です。これは僕が目指すビジネスにも応用できそうです。

「次、体験したい人!」
こう叫ばれると、咄嗟に何名かの参加者が手を上げました。その時は僕も義弟も手を大きく伸ばしてアピールしました。
でも僕は選ばれませんでしたが、義弟が選ばれました。そして無作為に選ばれた7名の男女が、その舞台に上げられました。
今度は、男同士のペアが二組と、女同士が一組で、義弟だけが一人余りました。どうなるのかなと思っていたら、義弟は野田先生とペアになりました。
「左側の人は、右肘を90度に曲げて、指先をピンとしてください」
義弟も正面を向いて、右手の指先を観客席に向けて立ちました。そして右に立つ野田先生が、義弟の右肘とその手首を掴んで、
「私がこの腕を曲げようとしますから、必死に抵抗してください」
義弟は頷きました。すると野田先生は、一気にその腕を折り曲げるように義弟の掌を、肩口まで力で引き寄せてしまいました。
他の三組も同じようにやってみました。中には顔を真っ赤にしてまで抵抗した人もいましたが、両手で折り曲げようとするパートナーの力には勝てず、肘は90度の角度を保つことができません。
会場は失笑のようなどよめきになりました。そこで野田先生が、
「一所懸命になってるつもりでも、力は分散してしまっていて、効力を発揮できていませんね。じゃ皆さん、自分の右腕が水が出るホースだと思って下さい」
一瞬舞台上の参加者は、「ん?」というような表情になりました。
「指先をしっかり意識して、そこから水がジャーと飛び出しているとイメージするんです」
すると義弟は再び肘を90度にして、観客席に向かって右手の指先をピンと張って向けました。
「そうそう」と言いながら野田先生が、また義弟の右肘と手首を掴んで、
「水は出てますか?」
「はい」
野田先生がグッと力を入れると、少し腕が曲がりました。
「まだ出てません。もっと蛇口をひねって水を出してください!」
義弟は少し天井を見ながらイメージに集中しています。しかしまたその腕は、力に負けそうです。
「まだまだです。この腕は消防車のホースです。向こうの壁の『非常口』のサインを指してみてください」
義弟は指先をそこに向けました。
「あそこが燃えています。火事です! 火を消してください。あそこまで一直線に届くように水を噴射してください!」
義弟の表情が変わりました。すると野田先生が力を込めても、今度は腕が曲がりません。先生がさらに力を入れると、義弟の体が後ろに倒れそうになり、足を踏ん張り直しながら表情には笑いが漏れていますが、それでも肘は90度を保ったままです。
他のペアも同じようにやって体験されましたが、女性のペアだけうまくいかないようです。
「じゃ、指先からレーザービームが出ているとイメージしてください」
女性は頷きました。
「向こうの壁にレーザーを当て続けて、壁を溶かして小さな穴を開けてください」
野田先生がそう言うと、女性はイメージしやすかったのか、今度はパートナーが力を入れてもその肘は曲がらなくなりました。

野田先生はセミナーの最後に、こう締めくくられました。
「氣を使うことによって、物事をうまくコントロール出来るようになります。これを体験したことのない人は『気のせい』だと言うでしょう。そうです『氣のせい』なんです。これからもうまく『氣』を使ってください」と。