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蔦が絡まる

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「何か、この問題は複雑なのだが、一つが分かると、すべてが繋がるのかも知れないな」
 と辰巳刑事は思ったのだ。
 一つ言えることは、
「なごみ、りな、両方の風俗嬢にとって、旦那は邪魔者だっただろう。奥さんのところに戻ろうとしても、奥さんの職業を毛嫌いして、結界を作ってしまったのかも知れない。なごみは、そんな旦那の本心が分かるのだろう。そうすると、どうしても旦那に対して、夫という気持ちになれないどころか、店にやってきて、ほぼ強姦のような辱めを受けたなごみは、復讐を考えたのかも知れない」
「さて、そこに持ってきて、つかさ(りな)の方も、ひどいことを言ったという後ろめたさがあることで、旦那に対して逆らえないような気持ちになった。ひょっとすると、そこか自分の中でスイッチが入り、好きになったという感情とは別の愛情が芽生えたのかも知れない。いわゆるM性というべきか、従わずにはいられない感覚である」
「そんな中、なごみはつかさに恨みがあった。そして、旦那にも正直殺意があった。つかさを犯人に仕立てて、旦那を殺そうと考えたのではないだろうか? しかし、つかさも旦那に殺意があった。旦那に対して利害が一致したので、まずは旦那の抹殺を考えた。そこで実行犯として誰にしようかと考えた時、自分たちに関係があって、まったくの赤の他人である、男を、利害が一致していないということで、犯人に仕立てようと考えたのが、草薙だったのだ。なごみがつかさに紹介したというのは、計画の一部だったわけだ。草薙が主人公のように書いてきた話だが、実際には、草薙は、オンナ二人の計画に載せられ、踊らされていたというわけであった」
 と、ここまでが、この事件の概要である。
 実際にどのようにして犯行が行われ、どうなったのかというのが、この先のお話になるのだが、今の時点が、このお話の、
「現在」
 であり、
「ここまでの話が、すべて過去だった」
 ということになるのだ。
 そう、本当の扉は、旦那が殺された時に開かれた。その扉を開くために、その向こうで、いくつかの準備段階が行われている。
 しかし、将棋の世界でもそうだが、
「大会の日には、すべてが終わっている」
 という言い方をする将棋の世界の人もいる。
 特に女性の場合は離婚などでも、
「感情が表に出てくれば、その時点で、気持ちは決まっているようなものだ」
 ということになる。
「この事件は、一体どのように解決されることになるのだろうか?」
 と考えていたが、一つが分かれば確かに、芋づる式だった。
 しばらくしてから、草薙の死体が発見された。草薙は、このまま少し捜査が、早く進めば、
「重要参考人」
 として、マークされる人物だったのだ。
 しかし、今度の事件に関係のある人物で、しかも、今のところ捜査線上に浮かぶほどの人間でもなかったのに殺されたことで、
「犯人たちが、草薙を犯人に仕立てて、自殺したかのように見せかけることだったのだが、今の段階で、誰が草薙を自殺と判断するだろうか?」
 というのが、決めてだった。
 そうなると、つかさとなごみの共犯の線が強くなる。
 逮捕してしまうと、どうやら計画していたのは、なごみのようだった。主犯はなごみで、つかさも、旦那から、ストーキングされていたことで協力したのだった。
 二人は、草薙というこの事件には、何も関係のない男を巻き沿いにして、一種の、
「交換殺人的なこと」
 を考えていた。
 普通の交換殺人は、お互いの犯人の関係性が知られると、そこで終わりなのだが、実際には交換殺人ではなく、発想が交換のような感じにしてしまうことで、共犯であるということを匂わせないようにしたのだ。特に二人が知り合いだというだけで、まさか共犯とは思わないということだったのだが、致命的だったのは、つかさが、旦那にストーキングされていることを警察に言われてしまったことだった。
 甘く見たということでもあったが、ここで、草薙を容疑者のように仕立てることで、何とかなると思っていた。
 実際には、なごみが、旦那のことを最初に見て分からなかったわけではない。偶然とはいえ、その日にモニターが壊れるなど、偶然としてもできすぎている。これも、実はなごみは知っていて、知らないふりをするという周到な計画であったのだ。
 すでにその頃、なごみは殺意を抱いていた。もし、自分が犯人だとバレた時、
「旦那がしつこく自分の仕事に干渉してきた」
 ということにすれば、殺意として立証でき、自分に誘致になるのではないかという、伏線もあったのである。
 風俗嬢が一番困る、
「身バレ」
 というものまで、計画に含めていたのだ。
 だが、複雑であればあるほど、一つが露呈すると、他の絡まった部分も一気にほぐれる。今度の事件はそういう事件だったのだ。
 ただ、草薙を殺したのもある程度仕方がなかった。
 草薙が、
「自分が何かに巻き込まれている」
 ということに気づき、その思いを、つかさに告げたからであったのだ。
 草薙の、
「飽きが来る」
 という性格を、二人のオンナは何かに使おうと思っていたのかも知れない……。

                 (  完  )
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作品名:蔦が絡まる 作家名:森本晃次