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さよなら、カノン

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スーパーキナリヤの駐車場出入口に停車するタクシー

正樹  「(運転手に)ちょっと待っててもらえますか」

出入口は閉鎖されており駐車場に車は一台も停まっていない
タクシーを降りて駐車場を巡回している警備員Aに話しかける正樹

正樹  「まだ営業時間じゃないんですか」
警備員A 「すみません。避難勧告が出たんで閉店時間が1時間前倒しになりました」
正樹  「店内に客は?」
警備員A 「お客様は皆お帰りいただきました。ひとりも残っていないはずです」
正樹  「そうですか」

スーパーキナリヤの屋上看板照明が消灯する
タクシーに乗りこむ正樹

正樹  「駅のほうへ」


合羽を着てコインパーキングに停まっている車を懐中電灯で照らす福住
パーキングのフェンス脇にミニパトが停まっている
ミニパトを通り超して停車するタクシー

正樹  「福住さん」
福住  「あ、吉川さん」
正樹  「見つかりましたか」
福住  「いえ、駅周辺のパーキングすべて当たったんですが、ここが最後」

パーキングを見渡す正樹
黄色い車体はない

正樹  「そうですか・・・。やはり車に乗ったまま・・・」
福住  「電車に乗り換えていれば、と思ったのですが。吉川さん、実穂子さんが行きそうな場所に心当たりはありませんか」

思考を巡らせる正樹

正樹  「すみません。まったく想像がつかない」
福住  「そうですか・・・。困りましたね」
正樹  「なんとか、なんとか探してもらえませんか」
福住  「足高署管内で主要な箇所はほぼ探し尽くしました。でもいなかった。つまり管轄外に出てしまっている可能性が高い」
正樹  「じゃあどうしろと?」
福住  「所轄が管轄外に捜索範囲を広げるにはそれなりの手続きが必要なんです」
正樹  「それなりの、って?」
福住  「例えば捜索願とか」
正樹  「捜索願? ならいますぐ捜索願の手続きをします」
福住  「あの、奥様が家を出られてからまだ半日。半日の時点で捜索願を出されても受理はされないでしょう。明日の朝まで待って、署まで足を運んで下されば」
正樹  「明日の朝なんて・・・。一刻を争うんです」
福住  「わかってます。私も吉川さんの話を聞いて、娘さんと実穂子さんのことすごく心配しています。だけどやみくもに動いても良い結果になりません。きょうはご自宅に帰られて明日捜索願を」

福住の進言に納得せず福住に背を向けてイラつく正樹
正樹の背後に近づく福住

福住  「私これから署に戻って警察のネットワークにアクセスして実穂子さんの車の行方を追います。内規違反になると思うけど。だから吉川さん、私からの連絡を待ってください」
正樹  「福住さん・・・」
福住  「大丈夫。おふたりは必ず帰ってきます」

作品名:さよなら、カノン 作家名:JAY-TA