さよなら、カノン
ダイニングテーブルの横並びに座る実穂子と正樹
正樹 「実穂子、きみもカノンも僕の大切な家族だ」
実穂子 「あたしだってカノンのためなら・・・」
正樹 「僕は家族のことが一番と思って毎日がんばって働いてる。良い父親ではないかもしれない、良い夫ではないかもしれない。でもがんばっているんだ」
実穂子 「うん、わかってる。感謝してる」
正樹 「実穂子、きみのことが心配なんだよ」
口をつけたグラスをテーブルに置いた実穂子の手を正樹が握る
実穂子 「あたし、どうしたらいいのか、わからなくて」
正樹 「少し休んだほうがいい」
実穂子 「休んでなんかいられない。カノンが早く小学校に通えるようにしないと」
正樹 「カノンならきっと大丈夫。焦る必要はない」
実穂子 「でも・・・。幼稚園のお友達はもう2年生に・・・」
正樹 「ああ、そこは先生と相談して決めよう。それより、実穂子・・・」
実穂子 「あたしは大丈夫よ。心配しないで、パパ」
正樹 「話を聞いてくれる良い医者を知ってる。話をするだけでも気が楽になるから」
実穂子 「医者だなんて・・・。あたし・・・」
正樹 「頼む」
病んでいると認めたくない実穂子
惨めな気持ちで泣きそうになる実穂子の肩を抱く正樹