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さよなら、カノン

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ケーキ屋の手提げ袋が駐車場の地面に落ちる
空っぽのサーブ車内
駐車している車の間を捜し回る実穂子
駐車場の隅に朱色の鳥居が建っている
鳥居の下にポツンとカノンが立っている
カノンの名を呼びながらカノンに駆け寄る実穂子
すると朱色の鳥居がトンネル状に幾重にも連なり同時にカノンが遠ざかっていく
カノンを追って鳥居のトンネルを駆ける実穂子
鳥居のトンネルが途切れた先にカノンが人形のように無表情で立っている
トンネルを駆け抜けカノンを抱きしめる実穂子
しかし腕の中にカノンはいない


”ママ”と呼ぶ声を聴く実穂子
バスタブの中で目を覚ます実穂子
風呂の湯が口元に及ぶほどずり落ちた体勢になっている
バスルームのすりガラス戸に子どもの影が映る

実穂子 「カノン?」

小声で呼びかけるも影は一瞬にして消える
バスタブを出ようと腰を動かすが胸元に重みを感じる実穂子
実穂子の腕の中でカノンの頭髪がバスタブの水面下に沈んでいる
腕を解き慌ててカノンを抱きあげる実穂子
ぐったりと脱力しているカノン
口の端から風呂の水を垂らすカノン
バスルームを出てカノンを脱衣室の床に寝かせる実穂子
カノンの顔と胸に耳を近づける実穂子

実穂子 「大変」

タオルを被せたカノンの胸を二本指を重ねて押す実穂子
カノンに反応はない
カノンの口から息を吹き入れる実穂子
再び早いテンポでカノンの胸を押す実穂子
カノンの呼吸は戻らない
息を吹き入れたり胸部圧迫を繰り返す実穂子
カノンの胸を押す実穂子の額から汗が滴る

実穂子 「息をして。息をしなさい」

涙目になる実穂子
カノンの胸を押す指に力が入らなくなっていく実穂子
カノンの胸を押すのをやめて床に座りこむ実穂子
カノンは目を閉じたまま無反応
呆然と壁を見つめる実穂子
宙を見つめて“息をして”と呟く実穂子
何をしても動かないカノンを見て自棄になる実穂子

実穂子 「息をしなさい、カノン」

命令口調でそう言いながらカノンの胸を手のひらで叩く実穂子
するとカノンの口から多量の水分が放出される
ゴホゴホとむせるカノン
四つん這いになって口中に溜まる水を吐きだすカノン
カノンの背中をさする実穂子

作品名:さよなら、カノン 作家名:JAY-TA