さよなら、カノン
長野県のとある町の公営体育館
駐車場で機材の乗った台車を押す正樹に女子バスケットチームの監督が話しかける
監督 「吉川さん、きょうはどうも・・・」
正樹 「初陣おめでとうございます、監督」
監督 「いやぁ北海道に嫁いだ元メンバーから電話がありましてね。試合見たよって。うちみたいな弱小チームの試合を中継していただいてありがとうございます」
正樹 「弱小だなんて、そんな。とにかく素晴らしい試合でした。こちらこそありがとうございます」
宮田が待つハイエースまで台車を押す正樹
監督 「それで吉川さん、このあと祝勝会あるんですけど、よかったら吉川さんたちにもご参加していただけないかと」
正樹 「ありがとうございます。お気持ちだけ。きょうはちょっと・・・」
機材をハイエースの荷台に積みこむ正樹
監督 「そうですか。ではまた次の機会に」
正樹に頭をさげバスケチームの選手たちが待つ輪の中に戻る監督
機材をおおよそ車に積み終えた宮田が正樹に言う
宮田 「あとはやっときます、チーフ」
正樹 「すみません」
宮田 「奥さんによろしく。それとカノンちゃんにも」
笑顔で頷く正樹
体育館の玄関からタクシーに乗る正樹
車の窓から遠ざかる体育館見つめる正樹
建物群を離れ瞬く間に車窓が闇に覆われる
窓の外の暗闇を眺める正樹
窓ガラスに正樹の開いたノートPC画面が映る
誕生日ごとに撮った4枚の写真がコラージュされている
どれもカノンの満面の笑み