さよなら、カノン
長野県松本市内のビジネスホテル
ロビーの応接セットの腰掛け険しい表情で打ち合わせする正樹とカメラスタッフの宮田
テーブルの上にはノートPCと体育館の平面図
宮田 「小曾根の野郎、こんなときにしょうがない奴だ。大事なときに・・・」
正樹 「まあ仕方ありません。大きな事故でなくてよかった」
宮田 「会社で余ってる人間いないんですか」
正樹 「掛け合ったけど、幕張の案件で手がいっぱいだそうです」
宮田 「どうします、チーフ? カメラがひとり足りない」
正樹 「僕がやります」
宮田 「いやいや。そしたらモニターは誰が?」
正樹 「モニター見ながら」
宮田 「そりゃ無理ですよ、チーフ」
正樹 「なんとかします。宮田さんみたいないい絵撮れないかもしれませんが」
宮田 「まいったなぁ」
図面を見ながらカメラの配置を話し合う正樹と宮田
正樹に携帯電話が鳴る
足高警察署からの着信
席を立って恐る恐る電話に出る正樹
正樹 「(やや蒼ざめた表情で)吉川です」
蒼ざめた顔が次第に紅潮していく正樹
そんな正樹を見るとはなしに見る宮田
通話を終え電話を切る正樹
震える足取りで宮田に近寄る正樹
正樹 「宮田さん、・・・カノンが・・・」
宮田 「見つかったんですか」
正樹 「カノン、生きてるそうです」
宮田 「えっ、カノンちゃんが生きてる? よかった、よかったですね、チーフ」
相好を崩す宮田
笑顔で涙を流す正樹