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さよなら、カノン

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龍神口バス停のベンチ(夜)
ベンチに伏しているカノンの前に跪く実穂子
カノンの肩と背中を包みこむようにしてベンチに座らせる実穂子

実穂子 「カノン。カノンなの?」

髪についた木の葉を払いながらカノンの顔を覗きこむ実穂子
ほとんど目を閉じたままのカノン
カノンの着衣をチェックする実穂子
浅葉幼稚園の半袖体操着、ピンク色の運動靴
靴には消えかけているがうっすらかのんと読める字
支えられないと倒れそうになるカノン

実穂子 「カノン、しっかり」

狼狽する実穂子
カノンの目が薄く開き、口元が開く

カノン 「ママ・・・」


意識が朦朧としているカノンを抱きかかえ県道を渡る実穂子
カノンを後部ベンチシートに寝かせる実穂子
夜の県道を走るサーブ
サーブのハンドルを握りながら片手でスマートフォンを操作する実穂子
実穂子のスマートフォンが福住の携帯電話に繋がる

福住  「あ、吉川さん、どうしました?」
実穂子 「福住さん、あたし、龍神口のバス停で・・・」
福住  「龍神口のバス停? (唐突に)おい、静かにして」

福住の携帯電話から複数の若者の怒号が聴こえてくる

福住  「ごめん、こっち終わったらすぐに折り返します・・・」

若者たちと言葉でやり合う福住

福住  「吉川さん、いまどこですか?」
実穂子 「家に帰る途中です。あの福住さん、あたし・・・」
福住  「じゃあ、すみません(通話が途切れる)」


コンビニの店前駐車場
現場到着したパトカーが微妙な角度で停まっている
若い体格の良い男性警官が暴れる不良少年Aの腕をがっしり掴んでいる
福住はコンビニ店主に悪態をつく不良少年Bとの距離を詰めにかかる
駐車場の隅に2台のバイク
バイクの周囲に手持ち花火の燃え屑と酒類の空き缶が散らばっている


吉川宅
ソファに寝かされているカノン
実穂子のバッグとスマートフォンがテーブルの上に無造作に置かれている
カノンの傍らでバケツに浸したタオルを絞る実穂子
カノンの髪と顔の汚れをタオルでふき取る実穂子
少し生気を取り戻したカノンに実穂子が尋ねる

実穂子 「カノン、自分の名前が言える?」

口ごもるカノン

作品名:さよなら、カノン 作家名:JAY-TA