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五感の研究と某国

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 だから、秘密結社に対しての備えには、そんなに苦労はない。この研究所が、国家機密となるようなことを研究しているとも思われていない。せめて、
「どこかの企業に高額で売れる」
 というくらいのものだったのを、研究所の中にいる、諜報員が、
「ここの研究は、国家ぐるみだ」
 というように組織に思わせたことで、行動を取らせる。
 しかも、表向きはそれほど大きな組織ではないという自負があるだろうから、研究所が油断をしていると思い、スパイに対しても甘いと最初から思わせているということろが、
「巧者だ」
 と言われるゆえんだろう。
 実際に、最高機密だとは思っているだろうが、それはあくまでも、国内向けで、海外に輸出する時の相手は、一企業だろうと、思っているのだった。
 そうやって油断させておいて、今度は、売りつけた国家を相手に揺すりを行う。
 それは、研究所でできることではなく、実際に行うのは、
「某国政府」
 であった。
 相手国は、まさか、
「某国政府」
 がゆすりを掛けてくるなどと思ってもいない。
 なぜなら、某国というのは、基本的に、国防であったり、軍事国家としては、そこまで有名な国ではないからだ。
「えっ? アメリカじゃないの?」
 と、読者諸君は思うだろう。
 しかし、この世界でのアメリカという国は、表には出ているが、もうすでに、東西冷戦が終わってからは表に出てきていない。
 出てきているように思うのは、国連であったり、国際社会が一致団結して何かに当たるというような時、アメリカの大統領が出てきて、まわりの国家を仕切っている。
 そもそも、アメリカという国は、民主主義の代表のような国、そんな国に、このような秘密の国防相が存在するわけがない。何と言っても、核兵器を持っている国だ。核のボタンはその手中にある。そんな国が、このような一つの国の一研究所に、大切な依頼などするものだろうか?
 そんなことを考えると、某国というのは、
「東西冷戦時代のアメリカ」
 に、限りなく近い国なのかも知れない。
 そんなことを考えると、某国に売り飛ばされそうになった研究、実は、この秘密結社自体がフェイクで、アメリカという国を一度どこかで意識させるためだったのかも知れない。
 その意識させる相手というのは、秘密結社にではなく、この国、日本に対してである。
 かつては、アメリカお、
「核の傘」
 に守られてきたが、果たしてこれからは、自営なのか、それとも、またしてもどこかの国に守りをお願いするのか、それが某国になるのだろう。
 自国でできない国防を、今までアメリカがやってくれていたが、今のアメリカは断るようになった。そのため暗躍してでも、日本を守るための国家体制を築くという意味で、今回の、
「五感の研究は重要だった」
 といえるであろう、
 某国がどの国かということは、いずれ分かることになるだろう。

                 (  完  )
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作品名:五感の研究と某国 作家名:森本晃次