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シーラカンス
シーラカンス
novelistID. 58420
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たたかえ!ヒーローお母さん

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 二十五分休みのチャイムを待って、ぼくはシンヤを小学校の屋上前の階段に引っぱっていった。
 シンヤは外でドッチボールがやりたいっていってたけど、今はそれどころじゃない。
 屋上につながるとびらの前についた。いつもここにはだれもこない。ヒミツのかいぎをするにはぴったりだ。
 ぼくはさっそく話を切りだした。
 「シンヤ、土曜日のことなんだけど」
 「ああ、あの時な」
 シンヤはなぜかキョロキョロしている。なんでこんなところにつれてこられたのか、わかってないみたいだった。
 「そういえば、おれ、ねっちゅうしょうでたおれたって。かあちゃんがいってた。サンキュな。家まで運んでくれて」
 「そうじゃなくてさ」
 「ん?なんだよ」
 「土曜日の、あの時のことだよ」
 「あの時?」
 「あれだよ!お母さんがホワイトみたいなヒ-ロ-にへんしんして、黒いスライムがワニになって、お母さんとたたかって…」
 しゃべりたい気持ちばっかり先にでて、うまくせつめいできない。それでもシンヤにはきっとつたわったはずだ。
 でも予想とちがって、シンヤはなんだかへんな顔していた。
 まゆ毛とまゆ毛の間にシワがよって、口が思いっきりとんがっている。
 「はあ?なんの話だよ?」 
 「なんの話って…」
 どういうことだろう。話が通じてないみたいだ。
 「だから!うちのお母さんがスライムとたたかって、勝ったようにみえたんだけど、でもその後…」
 「おいおいちょっと待てよ。お前のかあちゃんがヒ-ロ-でスライムとたたかってって、なに?意味わかんねぇよ」
 シンヤはかんぜんにばかにしたような顔をしていた。
 ぼくはショックだった。
 あの時、むしろシンヤの方がずっと楽しそうだったのに。
 きずついているぼくにシンヤは、もっとひどいことをいってきた。
 「お前、どうかしちゃったんじゃないの?それかジャステインのテレビみすぎ。
しかも自分のかあちゃんがヒ-ロ-って…」
 シンヤはついにわらいだした。
 「お前マザコンかよ」
 それを聞いた瞬間、ものすごい速さでおなかからドドドッとあついものがこみあがってきた。
 そのあついものはのどまでせりあがってきて、ついに言葉になってばくはつした。
 「うるさい!マザコンじゃない!どうかしちゃったのはシンヤの方だ!」
 ぼくのどなり声にいっしゅんシンヤはポカンとなった。
 ぼくは一度ギュッと目をつむってから、かいだんをかけおりていった。

 ⒒ ケンカした後

 あの屋上前のじけんから、ぼくたちはほとんど遊ばなくなってしまった。
 学校の中だけじゃなくて、外でも。
 ビッタマチョコのかけの話すら、話さない内にうやむやになってしまった。
 ぼくはシンヤみたいに友だちが多い方じゃないから、とたんに一人ぼっちの時間が多くなってしまう。
 時々あんまりにもさみしくなって、ぼくからあやまってみようかとも考えた。
 ジャステインのブルーだったら、きっとここで「けんかしたら、自分からあやまろう」っていうんだろう。
 でも、あの時のことを思いだすと、やっぱりなっとくいかない。
 あやまるならシンヤの方だ。
 でも当のシンヤはぼくにマザコンだのなんだのいっておいて、ぜんぜんあやまる気はないようだった。
 おかしいのはかんぜんにぼくの方だと思ってる。
 いったいどうしちゃったんだろう? 
 しょうてんがいでのことを思い返してみる。
 「ドサッ」となった音。あれはたぶんシンヤがたおれた音だ。
 その後光った青白い光。あれはお母さんが使っていた〈クレンザー〉のまほうの光とにていた。
 あれがかんけいしているんだろうか?
 そんなことを考えていたら、下校時間になっていた。
 今日も一人で帰らなきゃいけない。なんだかしんぞうにつめたい風がふいているみたいだ。
 ぼくは一人でげたばこにうわばきをもどすと、学校をでた。

 ⒓ 帰り道
 
 学校からの帰り道。
 いつもならとなりにシンヤがいた。
 ないしょで公園により道したり、石ころサッカーをしたりして家まで帰っていた。
 でも、さいきんはそういうこともなくなってしまった。
 「こんなことになるなんて…」
 ぼくはシンヤと、ヒミツの話でもりあがりたかっただけなのに。なんで今こんな風になっちゃったんだろう。
 ぼくは一人で石ころをけりながら、公園により道してみることにした。
 まっすぐ帰るなんて、つまらない気持ちがもっとつまらなくなりそうだ。
 家に帰るとちゅうに、三つのわかれ道がある。
 その真ん中を通って進むと、いつもシンヤとより道している広い公園にでる。
 そこはあなぼこだらけのボウルみたいな遊具や、ぐるぐるすべり台、石でできたおしろみたいなたてものがあって、おにごっことかかくれんぼにはぴったりの場所だった。
 おしろのてっぺんにのぼってみたら、少しは気が晴れるかもしれない。
 そうして、ぼくは真ん中の道をえらんでしまった。
 思えばそれが「まちがい」だった。

 ⒔ 一人ぼっちの公園

 公園にはめずらしくだれもいなかった。
 いつもならぼくより小さい子たちが、お母さんたちといっしょになって遊んでいたりするのに。
 ずっと、ぼくがすなをける足音だけがしていた。  
 なんだか他の人たちが全員この世からいなくなってしまったみたいだ。
 ぼくは公園をぐるっと一回りしてみた。やっぱりだれもいない。
 ランドセルをてつぼうにかけてから、おしろのてっぺんまでのぼった。
 おしろのまどの部分から下をみおろすと、ランドセルをかけたてつぼうが小さくみえた。でもそれだけだ。友だちといっしょじゃないと、なんにも面白くない。
 決めた。やっぱり明日、シンヤにあやまろう。ちゃんと話し合わなくちゃ。もしかしたら、おたがいなにかかんちがいしてるのかもしれない。
 一度気持ちがかたまると、なんだかすごくスッとして、早く家に帰りたくなってきた。
 今日もすごく暑い。ティ-シャツが汗でベタベタだ。 
 早くきがえて、エアコンのきいた部屋でマンガでも読もう。
 そう思って、おしろの中のはしごを後ろ向きにおり始めた。
 
 ⒕シンヤがへんだ 
 
 「ねぇ」
 とつぜん、せなかに声をかけられた。
 「わあ!!」
 思わずはしごから手をはなしてしまった。そのせいで、思いきりおしりと地面がしょうとつした。
 「いてててて…えっ!」
 ぼくはおしりをさすりながら声の方をみた。
 なんとそこに立っていたのはシンヤだった。
 「シンヤ!?」
 さっきまでだれもいなかったはずなのに。
 「シンヤ、どこにいたの?ぼく、わかんなかったよ」
 すると、シンヤはいやににこにこしながら答えた。
 「ぼくはさっきからずっとそこにいたよ」 
 シンヤはおしろのすみを指さした。
 このおしろの中は暗い。それにいろいろ部屋がわかれている。そのせいで気がつかなかったのかもしれない。
 「ひどいけがをしてしまってね。それがなおるまでずっとこの公園にいたんだ」
 「え!けが?だいじょうぶ?」
 おどろいてシンヤの体を見回したけど、とくにいじょうはなさそうだった。
 「シンヤのうそつき。けがなんてしてないじゃん」
 「なおったからね」