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シーラカンス
シーラカンス
novelistID. 58420
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たたかえ!ヒーローお母さん

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 きっとヒントはあのスーツにある。
 お母さんが仕事の時はかならずきている、あのこん色のスーツ。
 今日の午前中はお母さんがPTAでいない。
 今がチャンスだ。
 台所からごみぶくろを一まい取りだすと自分の首にまきつけた。
 これはとうめいマントのつもり。
 これから、お母さんの部屋にせんにゅうだ!

 ⒏ せんにゅうそうさ

 人の部屋をのぞいたり、あさったりするのがいいことじゃないのは知ってる。
 だけど、お母さんだってこの前、ぼくがためておいた虫のビンを、机の中からひっぱりだしてきたんだ。ぼくだってお母さんのヒミツをひっぱりだす。
 これでおあいこだ。
 ふすまを開けると、お母さんの部屋のにおいがした。目の前にはかがみのつくえ。左手にはクローゼット。右手にはふとんの入ったおしいれ。
 ぼくはまよわずクローゼットのとびらを開けた。
 服が入っているといえばここだ。
 あった!
 ハンガ-にかかったたくさんの服にまぎれて、あのス-ツがあった。
 ハンガ-の引っかける部分に手がとどかない。しょうがないから、かがみのつくえの前においてあるいすを持ってくることにした。
 「よいしょ!」
 スーツをおろしてみても、とくになんにもかわったところはなかった。
 「うーん…」
 こうなったら、きてみるしかない。
 ぼくはとうめいマントをぬぐと、ティ-シャツの上からスーツをはおった。
 やっぱりなんにもおこらない。
 少しなやんだけど、下のスカートもはいてみた。
 もしかしたら全部きないと発動しないタイプかもしれない。
 だぶだぶのスーツとスカートをきた。きたというか、うもれたようになってしまった。
 でも、やっぱりなんにも起きない。
 ためしに「へんしん!」といって、マゴコロせんたいのへんしんポーズをとってみた。
 へんかなし。さすがにちょっとはずかしかった。
 なんでだろう?ぜったいこのス-ツにヒミツがあると思ったのに。
 「うーん…。あ、そうだ!」
 思いついた!ポケットの中だ。
 ジャステインでは、レッドたちはかならず、まんなかにほうせきのついたブレスレットをだしてへんしんする。
 もしかするとこのス-ツの中にも、へんしんのための道具が入っているかもしれない。
 そう思ったぼくはスーツのポケットに手をつっこんでみた。
 カサッ…。
 なにかうすくてサラサラしたものが入っていた。
 取りだしてみると、四つおりにされた紙だった。
 広げてみると一番上に「雇用契約書」って書いてある。
 「なんて読むんだろ?えーと、用…書…?」
 「雇」と「契」と「約」が読めない。
 それでも、このスーツからでてきたんだ。
 きっと、じゅうようなてがかりにちがいない。
 わからないところはすっとばして、できるところだけ拾ってみる。
 「なんとか式会社…ヒーロースターズ。仕事内…なんとかは地球外のなんとか悪生物を…」
 うーん。なんとかが多い。
 でも「仕事」って言葉でなんとなくわかった。  
 これはお母さんが新しく始めた仕事についての手紙だ。
 しかも地球の外からの悪い生物をどうにかする仕事って書いてある!
 あのしょうてんがいのたたかいをみるかぎり、きっとたおすとかやっつける仕事なんだ。
 さらにつづきがあった。
 「へんしんス-ツを着用することにより、なんとか力が使用できる。ただし、スーツを使えるのは、なんとかされた本人のみである」
 「使えるのは」の後の「貸与」っていう文字もわからなかったけど、ようするにこのスーツは本当にへんしんできて、へんしんした後はまほうみたいな力も使えるってことだ!すごい!
 でもそのス-ツの力を使えるのは持ち主だけらしい。つまりお母さんじゃないとダメってことだ。そこは少しざんねんだった。
 自分じゃ使えないとわかると、ぼくはお母さんのス-ツをきていることがものすごくはずかしくなってきて、急いでス-ツをぬいだ。
 (あとで全部きちんとにもどさなくちゃいけないな。)
 そう思いながらス-ツをクローゼットにしまいこむと、もう一度あの紙に目を向けた。
 とちゅうの文章は読まないことにして、ぼくは手紙の一番下、さいごの部分だけをみた。
 だって「注意」って書いてあったから。
 「注意。現時点ではこの職務は秘密裏に行うものとする。活動内容が漏洩した場合はその者を解雇処分とする。必ず駆除後は状況に合わせた適切な対処をすること」
  知らない漢字だらけだ。頭が痛くなりそう。
 「秘密裏」と「漏洩」と「解雇処分」の部分に赤線が引いてあった。
 たぶんお母さんが引いたんだと思う。ざんねんなことに、これも全部意味がわからない。
 大人ってなんでこんなめんどくさい言葉で手紙を書くんだろ?
 しょうがないから、自分の部屋から紙とペンを取ってきて、赤線部分をできるだけていねいにうつした。
 今日の夜、お父さんがしゅっちょうから帰ってくる。
 その時にこっそりきいてみよう。


  ⒐ 漢字の意味


 その夜、ぼくがおふろからあがった時には、お父さんはもう家に帰ってきていた。
 そしてすでによっぱらっていた。
 ぼくがメモをみせて「秘密裏」と「漏洩」と「解雇処分」がどういう意味なのかきいたら、
 「ひみつりと、ろうえいと、かいこしょぶん〜?さいきんの三年生はむずかしいこと習うな〜」
 と、お酒くさい息をはきながら、意味を教えてくれた。
 「秘密裏」が「ヒミツに」。
 「漏洩」が「ヒミツをもらすこと」。
 「解雇処分」が「仕事をクビになること」。
 だそうだ。
 だから、きっとあの注意は「お母さんがかいじんをやっつける仕事をしてるってだれかにバレたら、お母さんはクビになる」って書いてあったにちがいない。
 それなら、ぼくはナイショにしていなきゃいけないんだ。
 お母さんが悪をたおすヒ-ロ-だってこと。へんしんスーツを持ってること。あの時、スライムとたたかってたこと。
 お母さんのナイショとぼくのナイショ。
 ナイショだらけだ。

 なんだかまたもやもやしてきた。
 今日もまた、ねむれないかもしれない。

 ⒑ シンヤのきおく

 次の日。待ちに待った登校日だ。
 ぼくはシンヤと土曜日のことを話し合いたくてしょうがなかった。
 あの紙にはバレたらお母さんがクビになるって書いてあった。だけど、シンヤはさいしょからお母さんがヒ-ロ-だって知ってる。だからきっとセーフ。
 学校についてから、自分のせきでシンヤに伝えたいことをいっぱい考えた。  
 (あのホワイトはお母さんだったわけだから、かけはぼくの勝ち!)
 (でも実はテレビのホワイトじゃない。お仕事でへんしんヒーローをやってるんだって教えてあげよう)
 (そういえば、シンヤがたおれた時、なにがあったんだろ?)
 (お母さんの部屋にへんしんス-ツがあること、じまんしちゃおうかな)
 (あ、あとシンヤにもこのことはぜったいヒミツにしてねっていわなくっちゃ!)
 ずっとこんな感じだったから、じゅぎょうなんか、ぜんぜん頭に入ってこなかった。
 シンヤもきっといまごろ、ぼくと同じ気持ちでいるんだろう。