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シーラカンス
シーラカンス
novelistID. 58420
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たたかえ!ヒーローお母さん

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 「すっげぇ!すごすぎるよ!大スクープだよ!本当にあれ、お前のかあちゃんなのか?」
 シンヤがぼくのおでこに自分のおでこをいたいほどくっつけてきた。
 ぼくもさいしょはあのホワイトがお母さんなのか、じしんがなかった。
 だけど、たたかいの時に使っていたまほうの名前。
 「カラアゲ」
 「オーブンポテト」
 「クリームチキンシチュー」
 これは全部お母さんのてりょうりだ。
 特にこの三つはぼくとお父さんの大好物だった。
 そしてさいごの「スペシャルストロベリービュッシュ・ド・ノエル」。
 これは年に一度だけ作ってもらえる、いちごクリームたっぷりのブッシュ・ド・ノエルだ。
 チョコレートケーキが苦手なお姉ちゃんのために、いつもお母さんはクリスマスの前の日からじゅんびしている。
 「ブッシュ・ド・ノエル」といわずに「ビュッシュ・ド・ノエル」というところが、お母さんのこだわりなんだ。
 このりょうりの名前をいえるのは、やっぱりうちのお母さんしかいない。
 「うん。そうだよ。あのホワイトはお母さんだ」
 「すっげぇじゃん!すっげぇじゃん!おい!インタビューしにいこうぜ!」
 「え!?」
 ぼくが止める前に、シンヤは走りだしていた。
 「おーい!」
 シンヤが大きく手をふりながらホワイト、じゃなくてお母さんの方へ走っていった。
 お母さんは白いマントをひるがえして、シンヤの方をふりかえろうとしていた。
 「わわわ…」 
 ぼくはあわてて、さっきまでいたかべの裏に引っこんだ。
 みつかっちゃいけない。
 あのホワイトがお母さんだったとして、後をつけてきたなんて知ったら、きっとすごくおこられる。
 かくれてから三秒もしない内に、また青白い光がお母さんたちの方で光った。
 それと同じタイミングで、なにかがドサッとたおれる音。
 コツコツという足音も聞こえてくる。
 シンヤのじゃない。
 ということは、お母さんのだ。
 足音は近づいたり遠ざかったりしている。ぐるぐる回っているみたいだ。
 もしかしたらシンヤといっしょにいるはずのぼくをさがしているのかもしれない。
 できるだけ息をころして、じっとしていた。
 頭からあせがダラダラとたれてくる。
 どれくらいそうしていたのかわからない。
 コツコツという音がとつぜんピタッと止まり、あたりがものすごくしずかになった。
 ぼくは思いきって中をのぞいてみることにした。
 すると、シンヤがゆかにたおれていた。
 「シンヤ!」
 ぼくはシンヤにかけよった。ほっぺを軽くたたいてみる。
 シンヤが「う…」と声をだしたので、安心した。
 とくにけがもしていないし、きぜつしているだけみたいだ。
 ぼくはかたにかけていたすいとうをおろした。
 「クエンサンで元気百倍」。
 お母さんの言葉を思いだしたんだ。
 シンヤも飲んだら元気になるかもしれない。
 ぼくはシンヤの口に、ふたを開けたすいとうをつけた。
 でも、中のスポーツドリンクは口からたれていくだけで、シンヤはぜんぜん起きない。
 ぼくはすいとうを地面におき、シンヤのおなかをゆさぶろうとした。
 その時。
 
 ムニョ…ムニョ…ムニョムニョ…

 どこからあらわれたのか、十五センチくらいの小さなスライムがゆっくりとこっちに近づいてきた。
 きっとさっきお母さんがたおしたスライムの一部だ。まだ動いてる。
 ぼくはパニックになってしまった。
 「うわぁ!起きろ!シンヤ起きろ!」
 シンヤのおなかをらんぼうにたたいた。
 それでもシンヤは「うーん…」というばかりで、なかなか目をさまさない。
 スライムはこちらにジリジリとよってくる。 
 あと一メートルくらいの所まできてしまった。
 「くるな!くるな!」
 ぼくはわらにもすがる思いで、地面においていたすいとうの中身をスライムにぶっかけた。
 すると、
 ジュー…
 スライムのはしっこがあわをブクブクさせながらとけていった。
 「やった!」
 きいてる!ぼくがもう一度スポーツドリンクをかけようとかまえた時、
 「ゆるさない…」
 スライムの中心が赤く光ると、びっくりするほどの速さで後ろにジャンプした。
 それを何回かくりかえすと、スライムはあっという間にみえなくなってしまった。
 「え、あれ…おれ、どうしたんだ?」
 シンヤがやっと目をさました。ぼくは、シンヤのかたとすいとうを持って、にげるように家に向かった。

 ⒍ 家に帰る

 シンヤは自分の家の前についても、まだ頭がぼ-っとしているみたいだった。
 ぼくはピンポンをおした。シンヤのお母さんがげんかんから出てきた。
「シンヤがねっちゅうしょうになったみたいです」
 つい、うそのせつめいをした。
 シンヤのお母さんはおどろいて、
「ごめんね。めいわくかけて。あとはおばちゃんやるから」
 といって、急いでシンヤをおぶって家の中に引っこんでしまった。
 けっきょく、ぼくが家に帰ったのは昼すぎだった。お母さんはまだいなかった。
 代わりに家にずっといたお姉ちゃんに「ドアノブ!昼ごはん早く食べちゃってよ。これからあたしの友だちくるんだから!」といわれ、れいぞうこにあったそうめんをあわててかっこんだ。
 その後はずっと自分の部屋でもんもんとしていた。
 やっぱりあのホワイトはお母さんだった。
 そこから、さっきまでのことがうずのように頭の中をぐるぐるし始めた。
 (あのスライムはやっぱりかいじんなんだろうか)
 (シンヤはなんで地面にたおれていたんだろう?)
 (シンヤ、ぼんやりしてたけど、だいじょうぶだったかな?)
 (あのスライム、「ゆるさない」っていってた。またおそってきたらどうしよう)
 いろいろ考えたらこわくなってきた。

 夜、お母さんが帰ってきた。
 「ごはんよ」ってよばれたけど、ぼくは「おなかがいたい」といって、ずっと部屋からでなかった。

 7 ぎもんがムクムク

 また日曜日の朝がきた。
 昨日の夜は考えすぎでねむれなかった。
 テーブルに朝ごはんがのっているのをみながら、テレビをつけた。
 お姉ちゃんは今日はねぼうだ。ぼくには注意するくせに、自分はねてるってなんだよ、まったく。  
 ねぶそくと、腹の立つお姉ちゃん。でもこんな時こそ、マゴコロせんたいジャステインだ。
 テレビの中ではジャ-シンのボスがひとじちを取って、レッドたちがたたかえないようにしていた。
 だけどレッドたちは、てきとたたかうチームとひとじちを助けだすチームにわかれて、さいごにはちゃんとかいじんのボスをやっつけていた。
 やっぱりみんなかっこいい。もやもやしてた気持ちがピカピカに光ってくる。
 そんな中でも、今日はとくにホワイトに目がいった。
 「あれ?」
 今みるとお母さんがへんしんしたすがたと、テレビの中のホワイトはあんまりにてない気がした。たいけいなんか、ぜんぜんちがう。
 お母さんはテレビの中のホワイトじゃなかったんだ。
 じゃあ、なんでお母さんはにせもののホワイトをやっているんだろう?
 急にムクムクとぎもんがふくらんできた。なんだか体がソワソワしてくる。
 こうしちゃいられない。
 ぼくはごはんをかきこむと、大急ぎで身じたくをした。