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シーラカンス
シーラカンス
novelistID. 58420
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たたかえ!ヒーローお母さん

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 道を進むにつれて、人気がだんだんなくなっていく。
 それにもかかわらず、お母さんはずんずん進んでいった。むしろスピードが速くなったみたいだ。
 ついにしょうてんがいがみえてきた。
 「おい。お前のかあちゃん、あの中に入っていくぞ!」
 ぼくたちはしょうてんがいの手前の曲がり角にいったんかくれた。お母さんは黄色いテープをむんずと広げて中に入っていった。
 そしたら、
 
 ピカッ!ピカッ!ピカッ!
 
 またあの光だ。
 「おい!なんだあれ?白く光ったぞ!」
 シンヤが目をみひらいてこっちをみた。
 「走れ走れ走れ走れ!」
 今までしんちょうに後をつけていたこともわすれて、シンヤが全速力で走りだした。
 「待って!ばれたらどうするの!?」
 バタバタと自分たちの足音がひびいた。音でばれたら…そんなことおかまいなしにシンヤはどんどん先にいってしまう。
 ついにしょうてんがいのアーケードの入口までついてしまった。
 「おっと」
 いきすぎて、二人でしょうてんがいの通りのまんなかにでそうになった。
 シンヤがあわてて、入口近くの、もとは何屋さんだったのかよくわからないお店の角にかくれた。
 角からのぞいたしょうてんがいは、みんなボロボロだった。
 お店のシャッターは、全部しまってるか、入口がこわれている。
 シンヤは角からひょっこりと顔をだした。
 そして、なにかをみつけて指さした。
 「マジかよ!みろよ!完全にホワイトじゃん!なんかかいじんぽいのもいるぞ!」
 そういわれて、ぼくもお店のかべからほんの少しだけ向こうをのぞいた。
 そこにはしんじられないようなこうけいが広がっていた。
 しょうてんがいの中にジャステインのホワイトがいた。
 少しだけしゃがみこんで、両手を広げている。
 まるでおすもうさんのかまえのようなポーズだった。
 そしてさらにおくには、黒っぽいスライムみたいなヤツがいた。
 ホワイトと向いあわせになってグニャグニャと動いている。
 「なあ、これってマゴコロせんたいのさつえいじゃないよな!?」
 シンヤの目がキラキラしている。
 「ちがうよ。だってカメラマンとかいないし。スライムみたいなヤツが本物すぎる」
 「だよな!だよな!あれぜったい生き物だもんな!」
 シンヤがワクワクするのもとうぜんだ。ぼくだってしんぞうがドキドキしてる。
 ホワイトと向かいあったスライムがクネクネとみょうな動きをした。すると、
 「お前、ジャマをするのか」
 しゃべった!
 まさにテレビにでてくるかいじんそのものだ。
 「あらわれたわね!」
 スライムを指さすホワイト。
 「ハア!」
 気合を入れる時のような短い声があがった。 
 ホワイトが、一度高くジャンプする。
 空中で右足をつきだし、左足をくの字に曲げながらスライム目がけてとんでいった。
 まるで横向きのロケットみたいだ。
 そういえば、前にお父さんがテレビでプロレスをみていた時があった。その時ぼくにワザの名前を教えてくれたことがある。
 あれはたしか「ジャンプキック」だ!
 でも、命中したはずの右足はスライムのぶよぶよした体にのめりこんでしまった。
 ホワイトがあわてて足を引きぬいた。
 黒っぽいスライムの体のまんなかがぼうっと赤く光った。おこっているみたいだ。
 スライムは足がたに体をへこませたまま、体をするすると上にのばした。
 そしたら、スライムは三メートルくらいのワニにへんしんした。
 そのままワニは二足歩行しながら体当たりをしかけてきた。
 ホワイトは左うでで顔のあたりを守りながら、右手で人さし指をのばした。
 そして、空中になにか文字を書き始める。
 するとなぜか、
 「カラアゲ!」
 と、さけんだ。そのとたん、

 ジュ!
 
 茶色いえきたいがホワイトの人さし指から、たいりょうにあふれだしてきた。油みたいだ。
 湯気がモウモウとでていて、みるからにあつそうだった。 
 ワニはすばやく体を引っこめた。
 ホワイトはさらに空中に文字を書きつづけた。
 そして、
 「オーブンポテト!」
 「クリームチキンシチュー!」
 とさけぶと、今度はワニの頭にジャガイモのような物がふってきた。ピストルのたまみたいに速い、ジャガイモの雨だ。
 さらにクリームシチューのような白いまくが空にあらわれた。
 そのまくはゆっくりおりてきて、ホワイトを守るはんとうめいのドームになった。
 「すげぇ!まほうかよ!でも、なんでさっきから食べ物の名前ばっかさけんでんだ?はらへってるのか?」
 シンヤは首をかしげた。
 そこがぼくにもよくわからなかった。
 たしかマゴコロせんたいのホワイトのひっさつわざは「ホワイティ-クラッシュ」と「ホワイティ-ビ-ム」だったはずなんだけど。
 でも、たたかうすがたはすごくかっこいい。
 ジャンプキックも、まほうも、すごいはくりょくだ。
 ワニといえば、ホワイトのこうげきで体のあちこちがボコボコになっていた。
 体のおくの赤い光も、なんとなくぼんやりしてきたみたいだ。
 「やれ!そこだ!」
 シンヤはそれこそプロレスでもみているみたいなおうえんをしていた。
 「あんまり大声をだしたらみつかるよ」
 ぼくは小さな声でいってから、シンヤの体をひっぱった。
 「だいじょうぶだって!あ、ほらみてみろよ!」
 どうやらホワイトはトドメをさそうとしているらしい。
 足を開いて、いのるようなポーズでじゅもんをとなえ始めた。
 その間、ワニはなんとか体をのばしてこうげきしようとしていたけど、その度にさっきの「クリ-ムチキンシチュ-」の白いまくがホワイトを守ってくれていた。
 急にものすごい風がふき始めた。
 顔に思いきり風がくる。
 ぼくたちは目を細めながら、ひっしにかべにしがみついた。
 「スペシャルストロベリービュッシュ・ド・ノエル!」
 強い風の中でも、ホワイトの声ははっきり聞こえた。
 「スペシャルストロベリービッシュ・ド・ノエル?」
 思わずおんなじことをくりかえしてしまった。
 だって、それって…。
 ホワイトが持ちあげた両手をふりおろした。ピンク色の大きな丸太のようなものがでて、すごいいきおいでワニの方へとんでいった。 
 ピンクの丸太がワニにぶつかる。
 
 べッシャア!

ゼリーがかべにぶつかったような音がして、ワニの体はいろんな所にとびちっていった。
 「ひゅ-!」
 シンヤはガッツポーズをした。
 ぼくもそんな気持ちだったから、こっそりガッツポーズした。
  たたかいが終わると、ホワイトはかたを上下させて、「ふぅ」と大きなため息をついた。
 すると、今度は「クレンザー」と、いって手をかざした。すると、大きな青白い光がでてきた。
 まるで手の平がかいちゅうでんとうになったみたいだ。
 そしてふしぎなことに、その光にてらされた場所は次々ときれいになっていった。
 とつぜんふってきたジャガイモの山。
 ピンクの大きな丸太。
 まほうでだしたものやスライムがぶつかってこわれかけたお店。
 とびちったスライム。
 全部が全部、なんにもなかったかのように元通りになっていった。