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墓場まで持っていきたい思い

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「その秘密というのは、昭和の終わりの頃の事件、詐欺事件と、企業の脅迫事件、あれは同じ団体による集団犯罪だったんです。その中に、被害者の会を創設させた、先代、つまり初代の会長が関わっていたんですよ。ある意味元締めと言ってもいいかも知れない。親父もまさか、祖父がそんな悪党だなんて知りもしない。だから被害者の会を自らの正義感でやっていた。それを親父はある時気づいて、自殺を図ったそうです。でも、母親に咎められて、思いとどまった。そこで、このことは墓場まで持っていこうと思ったんでしょうね。だけど、親父はできなかった。何とか、償いをと考えていたところで、犬山弁護士の力で何とか、問題なくここまでこれた。でも、それをいまさら犬山弁護士が裏切ろうとした。理由は何か分からないんですが、私が思うに、私の妻に対して、おかしな感情を抱いたんでしょうね。そこで、ここを離れる手土産に、秘密を暴露して、新しいところに雇われようと思っていたようです」
 と社長がいうと、
「30年以上も経っているのにですか?」
 というと、
「人間、年を取れば取るほど、臆病になっていくものです。ここまで来たのだから、傷つきたくないという思いがあるのは当然でしょう? 私もその気持ちが分かったので、協力することにしたんです、犬山弁護士には悪いと思いましたが、家族を守るためですよ」
 というのだった。
 事件は、ほぼ、それで間違いないようだ。
 主犯は、もう海外に逃げていたので、すぐには逮捕できないということであったが、狂言誘拐と、殺人教唆の罪に問われることになる。
 さすがに、昔の犯罪はすでにすべてが時効になっているので、大っぴらになることはなかったが、この犯罪をいかに考えるか、課題となった。
 この事件は。殺された弁護士の
「ワルになり切れない」
 という思いと、
「墓場まで持っていきたい思い」
 とが交錯してできたものだった。
 ただ、その後少ししてから、会長はいきなり体調を崩し、すぐになくなってしまったことで、昭和の電撃的な詐欺、脅迫事件の真相は、本当に、今となっては、謎のままに消え、墓場まで、持って行ってしまったのだった……。

                 (  完  )
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