連鎖の結末
ただ、このことをもう一人知っている人がいた。
それが、石橋だったのだ。
石橋は、その講師を知っている。知ろうとして知っているわけではなく、ある意味偶然ということであった。
そして、石橋は、陰陽師を見た時から、何となくであるが、今のスパイの暗躍、そして、陰陽師とスパイの講師が繋がりがあるということなどから、大体のことが分かった気がした。
そう、彼が、
「何となくと感じる」
というのは、彼が、鈴村という人間を知らないからだ。
鈴村の父親が、スパイの講師だということが分かっていれば、
「何となく」
ということが、もう少し鮮明に分かってくるのだろう。
鈴村の父親が仕事を辞めて、そして講師も辞めて、ホームレスになった。ホームレスの方が、
「気が楽だ」
というのもあるが、それは、時代を動かす上での気楽さと、やりやすさということであろう。
「別にスパイの暗躍が悪いことでも何でもないんだ」
と、石橋は感じてきた。
そうなると、先ほどの人柱というのが、果たして誰のことなのかということになるが、考えられることとしては、
「陰陽師本人なのかも知れない」
と思った。
まさか、生き埋めにするわけにはいかないが、陰陽師という上にかぶったものを生き埋めにすることで、世の中がハッキリしてくるのではないかと思った石橋は、
「陰陽師と、講師である、鈴村の父親に合わせる必要があるのではないか?」
と感じたのであった。
連鎖反応を繰り返すのは、
「まるで、しゃく取虫か、将棋の桂馬の動きのように、それぞれが飛び石のような形にならなければいけない。それが、一定の期間というキーワードに結びつくのではないだろうか?」
と考えたのだ。
不倫であったり。スパイ行為というものは、一定期間暗躍をすることで、
「世の中にあたらしい風を吹き込んでくるような気がする」
と感じるのだった。
その時最後に、陰陽師がふと、おかしなことを言った。
「連鎖反応の鎖という字は、鎖国の鎖という字と同じなのだよな」
とである。
その時、石橋と陰陽師には、何か恐ろしい気持ちが湧いてくるのを感じるのだった……。
( 完 )
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