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秘密は墓場まで

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「金が払えないんだったら、金を稼げる店、紹介してやるぜ」
 といって、女の顔を札束でひっぱたくなど、よくあることだろう。
 女はビビってしまい、すべてが作戦だったことに、やっと気づくのだ。しかも、キャバクラなどの店ではない。もっと確実に稼げる店、そう、ソープに売り飛ばすというわけだ。
 昔、昭和の初期の頃に、その日の食い扶持がないので、娘を売り飛ばすということが流行ったようだが、まさにそれの現代版である。
 この女が、借金で首が回らない女なのか、それとも、このホストの金ずるとして控えている相手なのか、よく分からなかった。
 ただ、二人とも、少し頭が回っていなそうなので、この元締めが操りやすいということで、
「飼っている」
 ということなのだろうか?
「うまく利用できるやつは、いくらでも利用する」
 ということなのだろう。
 これでもデリヘル嬢をやっている明美なので、少しは裏の世界を分かっているつもりだった。とりあえず、この二人は、この元締めに、いいように操られているということだけは、その通りのようだった。
 それから、数日が経って、計画が最終段階になる前に、何と殺すはずの相手が死んだようだ、事故死として警察では処理されたようだが、実際にはどうだったのか分からない。
 なぜなら、あの元締めも、美人局の計画で出てくるはずだった二人も、二度と明美の前に現れなかったからだ。
 それだけを見ても、
「彼らが今回のターゲットの死に関わっている」
 ということが分かる。
 交換殺人の鉄則が、
「絶対に犯行にかかわった人間が出会わないようにすること」
 だったからだ。
 一体どこで、何が、どうなったのか、経過どころか、結論も分からない。
「まるで、キツネにつままれたようだ」
 と感じたが、自分で手を下すことなく、お互いに最善の結果となったのは、ホッとした気分になれた。
「世の中が、あれほど理不尽だと思っていたのに、こんなにうまくいくなんて、歯車があみあったり、運命がいい方に流れるのも、いい出会いが結んでくれた縁なのだろうか? それとも、神様が本当にいて、勧善懲悪の神が、守ってくれたということなのだろうか?」
 と考えた。
 ただ、裏では本当に何が起こっていたというのだろう?
 一つ言えることは、
「ホストの美人局は、二度と現れることは、名実ともにありえない」
 ということだった。
 女の方は、実際にこのホストから逃れられたのだろう。
 彼女は、名前を、源氏名で、
「つむぎ」
 といった。
「つむぎとつぐみ」
 名前が似ているので、紛らわしいが、実はこの二人、姉妹である。
 どこでどうなって、この事件が絡み合ったのか、ハッキリと分からない。元締めも分かっていないかも知れない。
 しかし、このことをずっと黙っている人がいるのは間違いない。
「この秘密は、墓場まで持って行こう」
 と思っていたことだろう。
 しかし、その思いは、もう実際に達成されていた。
 そう、この男はすでに、この世にはいないのだから……。

                 (  完  )
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作品名:秘密は墓場まで 作家名:森本晃次