満月鏡
「少し お手伝いしてもいいですか?」
僕は 一瞬驚きの間が開いたが、植え込みから立ち上がり土の付いた軍手を振るった。
「とんでもない。見も知らないあなたにそんなこと。それに汚れてしまいます」
「あら。汚れるのが嫌なら こんな申し出はしませんよ」っと くすっと笑った。
「ほら、ちゃんとスニーカー履いているし、長ズボンはジーンズ。上は半袖だけど、虫除けと日焼け止めは塗ってありますからご心配なく」
「けど でもですねぇ」
「地域のことをしてくださっているのに 使う者が何かするのは可笑しくないでしょ?ね。」
僕は、やや押し切られる感じで申し出を受けた。
急いでいたので、軍手がない。あ、あったが 右とも左ともわからない軍手が一枚。
他にあったのは、ステンレスのゴミ拾いバサミ。彼女は 作業を始めたのだ。