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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紫に暮れる空 探偵奇談25 前編

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転校生



じめじめと湿度の高い梅雨を控えた空は、どんよりと曇っている。いかにも湿度を含んで重そうな雲は、地上を校舎にむけて歩く生徒たちの上を圧迫しているようだ。蒸し暑さを感じながら朝練を終え弓道場を出た一之瀬郁(いちのせいく)は、曇った空を見上げてため息をついた。梅雨は嫌だ。せっかく髪の毛を整えても、湿気で水分を含んだ髪はうねったり広がったりするのだ。

「やばい、降りそう」
「走ろ!」

友人とともに校舎に向かって駆けだす。昇降口に辿り着くと同時に。ポツポツと雨が降りだした。ざわざわと制服の群れの中に、色鮮やかな傘が点々と咲いている。

「郁、あれ」
「うん?」

友人の視線の先を追うと、昇降口の脇に教師と向かい合っている生徒が目についた。うちの高校の制服ではない。だから生徒たちの波の中で、その後姿は目立っていた。明るい栗色のセミロングが背中に垂れていて、教師に促されて校舎に入って行く。

「どこの制服かな?見たことないよね」
「かなあ」

のんびりそんな話をしているところで予鈴が鳴り、二人は慌てて校舎へ入った。






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