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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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夜が訪れるとき 探偵奇談24

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午後は完全なフリーだった。明日からの授業の準備も終わっているし、課題も片付けた。日頃の疲れが出ているのか、紫暮は縁側の畳の上に寝そべって脱力している。こんな時間も必要なのだろう。祖父も瑞もおらず、家の中は静かだった。また猫が遊びにきているようだ。おいでおいでと呼ぶと庭先からぴょんと上がり、寝そべる紫暮のそばに座った。

子どもの頃、祖母がここに座り洗濯物を畳んでいた光景を覚えている。夏はスイカを食べたり花火をした。冬は雪がたくさん積もった庭を、ここから眺めていたっけ。

(懐かしい)

猫を撫でながら、祖母が生きていた頃をつらつらと思い出す。祖母を失った瑞が、もう立ち直れないのではないかと思うほどに病んだ日々のことも。祖母だけが瑞と同じものをみて、その世界を共有し、守っていた。そして今も、瑞にとって祖母の存在は支えなのだ。

なあん、と猫が鳴いて眠る体制に入る。

「おまえ家帰んないのか?いつも一緒の友だちは別のおうち行っちゃったのか?」

紫暮の言葉になどおかまいなしに、猫はお昼寝モードに入っている。猫に話しかける人間の心理って何だろうと紫暮は可笑しくなる。瑞もよく、ここで猫に話しかけており、紫暮はそれを見るたびに微笑ましくなる。
ゆるゆると睡魔が忍び寄ってくる。眠りに落ちる前に先ほど瑞に言われた言葉が浮かんで、それについて考えようとしたのだが、心地よい眠気の前にどうでもよくなってしまった。

(だめだ、眠い…何だっけ…)

ふわっと心地よい風が吹いたのが分かった。すこしぬるい風。甘い香り。この匂いを、紫暮はよく知っている。
そばに誰か座っている。それがわかるのに、眠くて目を開けられない。心地よくて、心底安心する感覚だった。そこに座る誰かを、紫暮は知っている。懐かしくて、そしてひどく切ない気持ちになる。


「知らんぷりをすることも、時には必要」


祖母の声だ。優しく頭を撫でられたとき、紫暮は完全に覚醒して跳び起きた。
猫が呑気に眠っているだけで、そこには誰もいなかった。夢を見たのだろうか…。しかし確かに、そばで声を聞いたし、触れられた。