夜が訪れるとき 探偵奇談24
「うまく言えないんだけど…なんて言うのかな、足跡がつくみたいにして何かが家の中に入ってきたような気がした。残滓みたいなのが」
瑞が慎重に言葉を選ぶのは、紫暮が幽霊だのおばけだのの類を信じず、それが見えるがゆえに怖がりだった弟に寄り添って来なかったためだろう。
「だから、なんか変なとこ行ってきたのかなって思っただけ」
そう言うと、瑞は着替えてくると言って紫暮に背を向けた。
「…あんまり興味もっちゃだめだよ」
こちらには視線を向けず、瑞はそれだけ言って更衣室の扉を閉めたのだった。
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作品名:夜が訪れるとき 探偵奇談24 作家名:ひなた眞白