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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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夜が訪れるとき 探偵奇談24

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猫をひとしきり撫でて靴を脱いだ。手を洗おうと洗面所に向かおうとしたとき。

「ねえ」

ドタドタと瑞が走って来た。

「どこ行ってたの」
「え?」

普段紫暮の行動になど興味を示さない弟がそんなことを聞くので面食らう。

「文化展の監視だけど。実習生と文化部の顧問で交代で監視役を回すんだ」
「…文化展?ほんとに?」

弟は疑わしそうな視線を送ってくる。意図が読めない。何を咎められているのか紫暮にはわからなかった。

「どうした?」
「……」

瑞は視線を彷徨わせており、その顔は若干青ざめている。そして彼は紫暮の言葉には応えずに、玄関で脱いで揃えてある紫暮の革靴を手にする。

「何してるんだ、瑞」

弟は靴を手に外に出て屈みこむと、門扉の石畳の上に靴底をバンバン叩きつけているのだった。その音に驚いたのか、猫が目を開けて起き上がる。まるで、靴底にこびりついた土を落とすかのように、瑞は靴底をバンバン叩きつけている。紫暮は呆気にとられて弟の奇行を見つめることしかできない。瑞は紫暮の革靴に恨みでもあるのかと言う勢いでしばらく靴を叩きつけていたが、やがて。

「あのさあ」

瑞はずんずん歩いてくると、紫暮の胸元に靴をぐいっと押し付けた。

「家に変なもん持って帰ってこないで」
「は?」

まったくもう、だの、落ちたからいいものの、とか、そのようなことをブツブツ言いながら、弟は自室に引っ込んだ。何だというのだ。紫暮は追及するのを諦めて洗面所へ向かう。いつの間にか猫はいなくなっていた。




その夜、妙に色のくすんだ不思議な夢を見た。目が覚めた時に内容は思い出せないが、色のついた夢を見るのが珍しかったので、妙に印象に残ったのだった。





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